スーパーアプリ、Sコマース、デジタルウォレット:世界を牽引するアジアの3トレンド

アジア太平洋地域は、デジタル消費者の増加とその進化において、先駆者的な役割を果たしました。アジアの消費者は、モバイル端末のおかげで生活の様々な側面において、世界の他の地域の一歩先を行くようになりました。過去10年間に渡りスマートフォンの利用率は急上昇し、スマホに夢中な消費者が増えたことで、デジタルコマースの利用率は増加の一途を辿りました。かつては主にPCなど他の端末で行われていたアクティビティでさえ、今ではそのほとんどがスマホ上へと移行しています。

世界のデジタル消費者に対し、アジア太平洋地域が最も大きな影響を与えているのが、ソーシャルコマース(Sコマース)、デジタルウォレット、そしてスーパーアプリの3分野です。これらはいずれもアジア太平洋地域で発生したトレンドです。そのことは世界の他の地域においても認識され、その戦略を部分的にでも学ぼうという試みが見られます。これら3つのトレンドがいかにアジアで人気を博し、その他の地域がそこから何を学ぶことができるかを以下に解説します。

1) ソーシャルライフとコマースの結束

アジアの消費者はオンラインで過ごす時間の使い方が効率的です。例えばWeChatの場合、タクシーの呼び出しから、フードデリバリーの注文、映画チケットの購入、料金の支払いや病院の予約まで、この統合アプリ上ですべて完結できます。対照的に欧米市場では、これら個々のニーズを満たすための様々なアプリが競合他社によって次々に生み出されていることで、ソーシャルメディアはより乱立しています。

アジア圏におけるソーシャルメディアの人気の高まりに目を付けた企業はプラットフォームと連携し、企業のブランドメッセージを個人インフルエンサーたちがもつ幅広いネットワークに向けて発信するようになりました。その結果、アジア太平洋地域は初めてソーシャルとコマースが結びついた市場の一つとなりました。対照的に、西洋諸国のソーシャルメディア企業はショッピングツールの導入や、消費者との関係構築を目的としたソーシャルプラットフォームの活用には未だに消極的です。

知人からのレコメンドが特に重要視される中国のような市場では、消費者は企業からの情報を信用しません。代わりに彼らの購買決定を左右するのは、いわゆる口コミです。実際、当社のライフスタイルサーベイ(2019年)によれば、中国人消費者の40%が、家族や友人からのレコメンドを「影響力が非常に強い」と回答しており、これは米国の32%、英国の26%という回答率を上回っています。

2) スーパーアプリ革命

Sコマースと同様に、スーパーアプリ革命もまた、アジア太平洋地域で発生したトレンドの一つです。スーパーアプリとは、コミュニケーションやライフスタイル、ソーシャル、決済、小売など、複数の機能を一つのプラットフォームに集約した多機能モバイルアプリを指します。これらアプリ企業は既存インフラを利用して新たな収益源を生み出したり、顧客エンゲージメントを高めることができます。消費者もまた、このオールインワン型のアプリが提供するシームレスで一体的な、状況に応じて活用できる効率的な有用性の恩恵を受けています。

このようなアプリは、WeChatのような人気ソーシャルプラットフォームの出現を背景に、まずアジアで登場しました。Tencentは既存のメッセージングアプリに、消費者の決済やショッピングをアシストするサービスを追加することで、利用率とユーザー獲得数を押し上げました。

WeChatのようにメッセージングアプリとしてサービスを開始したスーパーアプリが多い一方で、Go-Jekのように運送サービスから始まったアプリもあります。2011年にオートバイの配車アプリとしてインドネシアで開始したGo-Jekは、25都市に点在する20万人のドライバーネットワークを利用して、様々な分野のサービスに乗り出しました。また、2012年にタクシー配車アプリとしてシンガポールで開始したGrabは、今では毎日の生活に関連する様々なサービスを提供しています。2018年にはデジタル決済アプリのGrabPayとフードデリバリーサービスのGrabFoodを立ち上げたほか、Uberの東南アジア事業を買収しました。ドライバーネットワークといった既存のリソースを活用して新たな収入源を生み出すべく、配車アプリにデリバリーサービスを加えることは自然な流れであると言えるでしょう。

3) デジタルウォレット発展の中心地

デジタルウォレットもまた、テクノロジーベースの商取引において、アジア太平洋地域が世界を先導している分野の一つです。現在、アジア太平洋地域は様々な代替決済プラットフォームで溢れかえっています。

デジタルウォレットは市場力学に応じて異なる進化を遂げています。例えば中国では、実に5億人以上の消費者が、オンラインや実店舗での取引にAlipayやWeChat Payといったモバイル決済サービスを利用しています。中国とは対照的に、市場が極めて細分化されているシンガポールでは、27種類ものデジタルウォレットが存在しています。さらにインドのような現金中心の社会でも、Paytmをはじめとするモバイルウォレットがデジタル決済の成長を促進しています。

アジア太平洋地域はモバイル決済分野において世界を牽引しています。2018年、アジアの消費者は1.6兆米ドルもの取引をモバイル端末上でおこないました。これは、世界全体で取引されたモバイル決済額の61%に相当します。当社の消費者ライフスタイルサーベイ(2019年)によると、アジアのデジタル消費者は、週単位でも月単位でも、モノまたはサービス購入のために頻繁に携帯電話を使用しているという結果が出ています。

デジタル消費者の将来図を描き続けるアジア

アジア太平洋地域は既に様々な分野において重要な地域として捉えられており、世界的なリーダーシップを発揮する場は今後も増え続けるでしょう。世界のパワーバランスがアジアに傾き続けることもあり、今後5年間はデジタルコマースの最大市場として君臨し続けることが予想されます。その牽引役となるのは、もちろん中国です。当社の調査によると、2023年までに中国が占めるデジタルコマース市場の割合は、アジア太平洋地域で64%、世界で27%に達することが予測されています。

小売業者やブランドがアジア太平洋地域で成功を収めるためには、デジタルチャネルをカギとした消費者へのアプローチや信頼関係の構築が不可欠です。重要なのは、ソーシャルメディアのようにライフスタイルにおける選択肢が増え続けるなかで、消費者がいかに携帯電話を活用しているかを考察することです。本記事で紹介した3トレンドの他に、モバイルも引き続き重要な役割を担うことでしょう。