東京2020オリンピック:変容するスポンサー企業のアクティベーション戦略

※本記事は英語でもご覧頂けます:Tokyo 2020 Olympics: Evolving Activation Strategies for Sponsors

東京オリンピックは、2020年に新型コロナウイルス(COVID-19)が発生して以来、先行き不透明な状況が続いている。感染拡大の第一波が世界を襲った初期段階から大会の開催可否が懸念されていたが、最終的には当初の予定より1年延期されることとなった。日本では、東京オリンピックのスポンサー企業60社が支払った契約総額は30億米ドル以上と報じられており、これには国際オリンピック委員会(IOC)と直接契約を結んだ海外のスポンサーは含まれない。しかし、無観客での開催が決定したことで、パートナー企業やスポンサー企業は、大会期間中の露出や効果を最大限に高めるための調整を余儀なくされている。多くのブランドや企業は、東京都内の競技施設やビルといった物理的資産がアクティベーション戦略において重要な役割を果たすと考えていたが、今回のオリンピックは通常のように多くの観客を動員したり、派手な演出をすることなどができないことから、現在は投資収益率を最大化させるための調整を迫られている。ブランドがどのように対応するかは、東京大会だけでなく、今後のオリンピックにおけるスポンサーシップの価値に影響を与える可能性もある。

デジタルエンゲージメントで投資収益率は向上するか

直接的な収益よりも、露出を増やすことに重点を置くブランドにとって、オンラインでのファンとの関わりは重要な機会となっている。これはスポーツ界に限ったことではなく、ユーロモニターの『ボイス・オブ・ザ・インダストリー:デジタルコンシューマーサーベイ』調査(2021年)によると、業界の枠を超えて、約60%の業界関係者が、過去1年間でデジタルコマースに影響を与えた最も重要な要因は、デジタルエンゲージメントであると回答している。

パンデミックの間、スポーツリーグや団体は、より充実したコンテンツの制作戦略やソーシャルメディアなどを活用したデジタルアクティベーションを通じて、スポンサーにスポットライトが当たるよう努めてきた。例えば、欧州のいくつかの主要サッカーリーグや北米のNBAは、2020年4月から2021年4月の間に、デジタルフットプリントを10%以上増加させている。また、オリンピックの公式ソーシャルメディアアカウントの多くでも、大会に向けて、YouTube、Twitter、Instagramなどの主要なプラットフォームでフォロワー数が顕著に伸びている。

『東京オリンピック』公式ソーシャルメディアチャネルのフォロワー数(2020年)

ソーシャルメディアは、スポーツリーグや団体、関連ブランドがファンとつながりを持つうえで重要な役割を果たしてきたが、スポンサーにとっての万能な解決策にはならない。

国内外の多くのファンが集まることを期待して製品やサービスの販売を計画していた日本企業の多くは、商業的な利益を得る機会のひとつを失ったことになる。また、大会期間中に訪れる全ての人が大会を楽しめるエリアであるオリンピックプロムナードに設置される予定だったスポンサーブースも、大幅に縮小される。

チャネルに関わらず、大会全体を通してブランドメッセージが重要に

ブランドや企業にとっての最大の課題は、単に通常通りであればオリンピックイベントに集まっていたであろうファンにオンライン上でリーチすればよいということではなく、ファンを理解し、マーケティングや広告活動を通して信頼できる企業であるという印象を与えることである。これは、パンデミック発生以来、スポーツ界全体で見られてきた課題である。

好感度を上げるためには、従来のスポーツマーケティングの枠に囚われない考え方が必要であると認識したスポーツ界は、アクションを起こすことをためらっている。特に2021年に入ってからも、民衆の支持率が低下しているオリンピックにおいては慎重にならざるを得ないだろう。一方で、人々の共感を呼ぶような真摯な対応をするブランドは、イベント期間中の露出によってファンの好感度が上がる可能性もある。

スポンサーはどのようにして成功を測るのか

スポンサーシップの成否は、企業やブランドのマーケティング目標や、初期投資に対するアクティベーションの効果をどのように測定するかによって大きく左右される。先行きが不透明な中、デジタル戦略に重点を置くことで露出を高め、世界中にメッセージを拡散することが出来るブランドのスポンサーシップは、高い効果をもたらすだろう。建物や競技施設といった物理的資産を使用したマーケティングへの依存度を減らすことができる企業のスポンサーシップは、そうしない企業やそれができない企業のそれよりも、より高い効果が期待される。

戦略やチャネルにかかわらず、国内外のオリンピックファンとの関わり合いを、有意義かつ真摯に取り組むことが、いかなる企業キャンペーンの成功にとっても不可欠である。

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(翻訳:横山雅子)