新型コロナウイルス:高まる免疫向上とホリスティックな健康への需要

※本記事は英語でもご覧頂けます:Coronavirus Accelerates Demand for Immunity and Holistic Wellness

2020年、世界のコンシューマーヘルス業界は2,729億米ドルの規模となり、2019-2020年の実質成長率は前年比で1.4%と、前年に比べると僅かに減速しているといえます。市場が成熟していることと併せて、いわゆるスイッチOTC製品や革新的な新製品が慢性的に不足していることが業界の伸び悩みにつながっています。

それに加え、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック発生により、消費者がCOVID-19の予防という一点に集中し始めたことを受け、コンシューマーヘルス業界は総じて受け身の姿勢となり、多くの製品カテゴリーや原料分野において動きが鈍くなりました。

2020年のOTC医薬品の売上は、同年初頭に西欧やラテンアメリカ、東欧など一部地域で買い占めが起こったことで増加しましたが、世界全体では前述のとおり業界が抱える慢性的な問題もあり、下降傾向にあります。OTC医薬品は、全体の売上の86%を上位4カテゴリー(咳・風邪・アレルギー薬、鎮痛剤、整腸剤、皮膚薬)が占めますが、これらの実質成長率も2020年はマイナス傾向にあります。一方、COVID-19の発生による消費者需要の増加の恩恵を受ける形で、アセトアミノフェンや睡眠補助薬の同年の売上は伸びています。2020年から2025年にかけ、OTC医薬品は今まであまり利用されてこなかった新興市場国における売上が増加することが予想されます。

カテゴリー別 コンシューマーヘルス市場規模(小売金額ベース):2015-2025年

Source: Euromonitor International’s Consumer Health Research, published 7 September 2020. Note: Values in USD, fixed 2020 exchange rates and constant 2020 prices

スポーツ栄養製品および体重管理製品は2020年に売上が落ちるがその後回復が見込まれる

2020年は初頭からスポーツクラブやジムが閉鎖を余儀なくされ、エクササイズを行う機会を失った人々がスポーツ栄養製品を消費しなくなったことで、同製品カテゴリーは売上が低下しました。スポーツ施設が再開した後も消費者は感染を恐れ、従来の施設内での運動に対する警戒を緩めていません。また、多くの人々にとって新しい習慣となったホームフィットネスは、必ずしもスポーツ栄養製品の摂取を必要としません。

2020年に始まった外出自粛対策の結果、体重管理製品や健康関連商品の売上も減少しました。人々が「減量しなければならない」という社会的プレッシャーから解放されたことが、これら製品カテゴリーの売上に直接的な影響をもたらしました。 この期間、消費者はミールリプレイスメントではなく食卓に座ってきちんと食事することを選んでいたようです。

ただし、今後消費者の生活が通常に戻り、ソーシャルディスタンス対策も徐々に緩和されていくことが予想されることから、当社はスポーツ栄養製品および体重管理製品のいずれのカテゴリーも、今後5年間の売上は回復傾向に転じると予測しています。

免疫力向上の訴求がビタミン剤・サプリ分野を牽引する

予防的健康は、パンデミック発生当初より重要視されていました。パンデミック発生直後から、消費者は得体の知れない新型ウイルスから自分を守るために、ビタミンCやビタミンD、免疫力を高める効果があるとされるその他のサプリメント製品を買いに走りました。このことから、ビタミン剤・サプリメント製品の売上は全体的に増加し、特にラテンアメリカ地域では免疫力を高めるとされるサプリメント製品の売上が大きく成長しました。

この消費者傾向は将来的にも続くものと見られています。ビタミン剤・サプリメント製品カテゴリーは、免疫力の向上を求める消費者および免疫力向上効果を謳った新製品を展開する企業によって、今後も拡大していくでしょう。例えば米国ではエキナセアやエルダーベリー、中国ではオタネニンジンや薬用キノコ、インドではウコンやトゥルシーといった製品が、このトレンドに乗って売上の増加が期待されています。

サプリメントカテゴリー全体および免疫力向上を訴求するサプリメント製品の売上成長率(小売金額ベース) 2014—2020年

Source: Euromonitor International’s Consumer Health Research, published 7 September 2020. Note: Values in USD, fixed 2020 exchange rates and constant 2020 prices

より多くの人々がホリスティックな健康を求めるようになる中、メーカーは免疫力の向上や、睡眠や精神的な健康に重点を置いたイノベーションから利益を上げるようになるでしょう。ユーロモニターインターナショナルが2020年7月に実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:COVID-19サーベイ調査」の結果によると、企業回答者の70%以上が「健康やウェルネスに関連した商品の購入に対する消費者意識は、中期的から恒久的に変化するだろう」と答えています。

質問:「健康やウェルネスに関連する商品をより購入するようになる」という
消費者行動の変化は、どの程度続くと考えますか?

Source: Euromonitor International’s Voice of the Industry: COVID-19 Survey, April 2020, July 2020

また、消費者の関心は、従来人気があったスポーツ栄養製品や体重管理製品といった分野へいずれ戻ってくると見られます。今後は製品カテゴリーのタイプにかかわらず、「ビューティー」、「エナジー」、「消化」、「ストレス」、「記憶力」といった領域で新しい商機が生まれることが予想されます。そして、コンシューマーヘルス業界でもEコマースへの移行はゆっくりながらも確実に起こっています。Eコマースはパンデミックの長期的な影響を抑えるためにも、同業界の将来にとって鍵となるでしょう。