新型コロナウイルスと出産:出生率は上がるか、下がるか

※本記事は英語でもご覧頂けます:Coronavirus and Childbirth: Future Baby Boom or Bust?

新型コロナウイルス(COVID-19)の発生を受け、世界中でロックダウン対策が講じられました。自宅待機を余儀なくされ、従来のレジャー活動も一時的に出来なくなった中、将来的なベビーブームの到来を予想する声が上がりました。しかし、世界経済が大恐慌以来最悪の景気後退に突入することを考えると、ベビーブームの発生は考えにくいと思われます。

COVID-19のパンデミックが出生率にもたらす影響を理解することは、子どもに関連する産業に携わる企業や政府機関にとって重要であり、世界経済にとっても、人口増加が高齢化率および潜在的な経済成長にもたらす影響を考えると極めて大きな課題であるといえます。

出生率にもたらされるCOVID-19の隠れた影響

出産および出生率に影響を及ぼす要素は、年齢構成(特に出産年齢といわれる15歳から49歳までの女性人口)から社会経済の変化まで、様々です。パンデミックの発生前は、世界の出生率は下降傾向にありました。生活水準および女性の労働参加率の上昇、そして都市化が進んだことによる生活様式の変化などが大きな要因であったと考えられています。

図1 世界の出生率および新生児出生数 2010年-2030年

Source: Euromonitor International from UN/Eurostat/World Bank/national statistics. Note: Data from 2020 are forecasts.

そして今、COVID-19によって引き起こされた経済的および社会的な変化が、人間関係や健康、世帯収入、人々の移動、避妊といった、人々の出産に対する考え方や出生率に関係する様々な要素に影響を及ぼしています。現在も続く先行き不透明感により厳密な予測を立てるのは難しいですが、2021年、世界の新生児数は前年比で最大33万人の減少となり、同年の世界の出生率も2.8人に下落するものと見られています。

しかし、COVID-19が出産および出生率にもたらす影響は、国、地域、そして先進国または発展途上国によっても異なります。2020年から2021年にかけ、先進国の新生児数はさらに減少すると予想される一方で、発展途上国では、COVID-19が出生率に与える影響の度合いは、都市化の進行具合や収入レベルによっても変わります。

出生数の減少が予測される先進国市場

パンデミックの最中、先進国の若い世代(特にミレニアル、ジェネレーションZと呼ばれる世代)は暗い経済および求人市場に直面していることから、結婚や出産の先延ばしを考えるようになっています。歴史的にも、経済不況時は出生数の減少が加速する傾向が見られてきました。例えば、2008年の世界金融危機の影響を受け、米国の新生児数は2009年には2.8%、2010年には3.2%減少しました。

図2 先進国における新生児数の変化 2020年-2021年

Source: Euromonitor International from UN/Eurostat/World Bank/national statistics. Note: Data are forecasts.

パンデミックが発生する前から、殆どの先進国における出生率および新生児数は既に減少傾向にありましたが、その傾向は今後2年間でさらに加速するものと思われます。先行き不透明感が強いことから、高所得国のカップルは子育てを含むあらゆる長期的な投資を先延ばしするようになり、延いては更なる出生率の低下につながります。

イタリアでは、急激な景気後退(同国の2020年GDPは11%縮小)および失業率の上昇(同年10%)が、若い世代を含む世帯の収入に大きな影響を及ぼしたことから、2020年および2021年の新生児数は著しく減少することが予想されています。米国では、景気後退の他にも移民数の急減が2020年の国内新生児数に影響をもたらしています。

高所得国における出生率の更なる低下は「高齢化」と「人口減少」という、経済成長性を蝕む問題を加速させます。不況下において新生児数がさらに減少することで、先進国市場における子ども向け商品やサービスの需要は、短・中期的に低迷する可能性があります。

発展途上国では異なる様々な影響が見られるか

経済発展および都市化は、低・中所得国の出生率に大きな影響をもたらす要素であり、実際2000年に3.6人だった出生率は、2019年には3.0人まで低下しています。現在、景気が後退し、ロックダウンによって地方部と都市部の間の人々の移動が妨げられている中、この傾向は続くと見られますが、COVID-19による影響は、地方部と都市部の出生率に異なる影響をもたらすことが考えられます。発展途上国の地方部では、貧困によって教育を受けられない若年層が結婚に追い込まれることがあり、一般的に出生数は増加傾向にあります。いくつかの地域では、パンデミックの影響で家族計画センターが閉鎖を余儀なくされ、避妊具を入手出来なかったことも、出生率上昇の一因になっていると考えられます。

一方で、発展途上・新興都市では、住民はコロナ禍における失業や収入の減少といったリスクに晒されており、都市部では育児コストも比較的高いことから、カップル達は見通しが不透明な経済状況の中で子どもをもうけることに後ろ向きだといえます。これらの異なる影響もあり、発展途上・新興国の出生率は、2020年は3.0人に留まり、また2021年には2.9人に下落すると予測されています。

COVID-19が世界人口に影響を与えていることは疑いようがありません。死亡率は高まり、パンデミックで生じた社会経済的な変化が出産動向に影響を及ぼすことから、2020年から2021年の出生率は国レベルおよび世界レベルで変化する可能性があります。長期的な観点では、世界の人口は高齢化が進み、出生率は下落し、世帯は縮小化の傾向にあります。企業は、変わりゆく家族のあり方や消費者ニーズに対応していく必要があります。