回避された「ノー・ディール」ブレグジット ただし貿易リスクは残る

※本記事は英語でもご覧いただけます:No-Deal Brexit Has Been Averted but Escalation in Trade Risks Remain

「ノー・ディール」ブレグジット(英国の合意なきEU離脱)は回避された。2020年12月24日、英国と欧州連合(EU)は土壇場で通商協定に合意し、双方が苦しんでいる現在の経済不況を更に悪化させるであろう混乱の発生は免れた。合意の達成は、2つの経済圏が、今後も前向きな関係を構築する姿勢を示したことを意味している。

ブレグジットの代償は、国民投票(レファレンダム)後の4年間に経済および人々にもたらした先行き不透明感もあり、極めて大きなものであった。今回合意が成されたことにより、ビジネスにもたらしていた不透明感は払しょくされ、投資が促進されるだろう。今回の合意達成は、英国および欧州の経済が2021年に回復に向かうために必要なことであったと言える。

しかし、協定の合意は成されたものの、いくつかの将来的なリスクは残っている。EUと英国間の貿易は、その規模と同2圏内の国々にとっての重要性もあり、英国およびEUの政策に関する協議において引き続き中心的課題であり続けるだろう。制度の変化はビジネスに大きな影響をもたらすことが予想されるため、今後も進捗を注視していく必要がある。

英国とEUはどのように3つの問題を解決したか

ブレグジット合意にあたり障害となった3つの争点が、(1)英国とEUの間における「公平な競争条件」の保証、(2)合意事項の履行、そして(3)EU加盟国の漁船の英国海域での操業権の問題であった。これらは差し当たり解決されたが、今後も不安材料として残り続ける。

公平な競争条件に関しては、英国はEUの法律に準拠することなく、独立性を確保することとなった。原則、全ての品目で関税ゼロ、割り当てゼロ、が維持されるが、EUは英国側によって公正な競争をゆがめられた場合、英国産の物品に報復関税を課す権利を有し、逆もまた同様となる。

新しい通商協定の履行については、英国とEUの双方が輩出する人員による合同委員会が設置される。同委員会は協定が正しく解釈されたうえで履行されるかを確認し、双方の意見の対立が発生した場合、同委員会内において紛争を解決することになる。

漁業権問題については、英国は独立した経済水域となるが、5年半の移行期間の間に英国の海域におけるEUの漁獲割当は25%削減され、移行期間後は、漁獲割当を巡って毎年漁業権が交渉されることになる。

ブレグジット合意は成されたが、潜在的な対立点は残る

「公平な競争条件」は、文字通り公平な競争の保証を目指すものだが、EUは英国に比べより大きな経済圏であることから、EUから英国への関税は、より大きな影響があることを意味していた。英国の全輸出の46.0%がEU向けであり、これは英国GDPの7.8%に値する。一方、英国向け輸出がEUの全輸出(EU圏内の輸出も含む)に占める割合は6.1%に留まり、同圏の総GDPの2.2%に過ぎない。GDPに対する英国との貿易の規模を見ると、ベルギー、オランダ、アイルランド、マルタといったEU加盟国は、英国との貿易に混乱が発生した場合、大きな影響を受けていたであろう。英国への輸出は、ベルギー、オランダ、アイルランドにとって、それぞれのGDPの6.4%、5.2%、4.4%に該当する。また、英国からの輸入は、マルタにとってGDPの12.2%に該当する。

GDPに対する英国との貿易の規模(%)2019年

Source: Euromonitor International from International Monetary Fund (IMF), Direction of Trade Statistics Note: EU figure does not include the UK

EUは英国海域における漁業権が今後5年半保証されたが、その後は毎年交渉しなければならない。英国領ジブラルタルとスペインの間の国境は従来通り開かれた状態が維持される。北アイルランドは、地続きのアイルランド共和国との間に物理的な国境が設置されることを避けるため、離脱協定案に従ってEU規則に従う。これらは全て、今後問題になり得る懸案事項である。

結論

EUと英国が合意に達したことから、ユーロモニターは、2021年1月18日に更新予定の当社のマクロ経済予測から、No-Deal Brexit(ノー・ディール・ブレグジット)およびDisorderly No-Deal Brexit (無秩序なノー・ディール・ブレグジット)のシナリオを削除する。EUと英国が自由貿易協定に合意することを想定していた当社のベースラインシナリオによると、大規模なワクチンの接種の実施によってパンデミックが収束に向かい、ブレグジットによる先行き不透明感が払しょくされることから、英国のGDPは2021年に5.0%、2022年には3.3%成長するものと見られる。

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