世界の消費者トレンド – サブサハラ・アフリカ地域

※本記事は英語でもご覧頂けます:Global Consumer Trends in Sub-Saharan Africa

ユーロモニターのレポート『2021年 世界の消費者トレンドTOP10』では、新型コロナウイルス(COVID-19)の発生により、人々がこれまでの物事の進め方や商品、物理的な空間、人との交流の仕方を見直し、新たな方法を模索する必要性に迫られていることが示されている。同レポートで紹介された世界トレンドがパンデミックによって拡大する一方で、それらのトレンドに対する消費者の反応は、多くの場合、地域の傾向性や各国の状況によって様々である。ここでは、ユーロモニターの世界の消費者トレンドのうち、ケープタウンの弊社専門家チームが特定した、サブサハラ・アフリカ(SSA)地域に最も大きな影響を与えている2つのトレンドを紹介する。

「自宅が新たな仕事空間」:オフィスの遍在化

COVID-19以前のSSA地域はインターネットの普及率が低く、同地域でインターネットを利用できた世帯はわずか25%に留まり、データプランが高額であったことも影響して、リモートワークへの移行はなかなか進まなかった。また、生産性(Productivity)とは、実際のオフィスに従業員が物理的に存在することと同義であるという一般的な概念もまた、リモートワークの普及が遅れていた理由のひとつと考えられる。しかし、COVID-19のパンデミックが発生したことで、雇用者と従業員の双方にとって、この概念は変化しつつある。

パンデミックの事態に備えなどしていなかった雇用主は、従業員が自宅でインターネットや携帯電話を使えるようにするために突然の奔走を余儀なくされ、オフィスにいることが不可欠な場合は、シフト勤務やローテーション勤務、ロックダウンによる短時間勤務などが実施された。その一方で、既に週1日などでリモートワークをサポートしていた企業は、オフィス外での仕事の効率性を長期的に確保するためのプロセスを導入することで対応した。

インターネットが利用できる世帯の割合(2020年)


Source: Euromonitor International Passport Database

このような状況から、「オフィス」という概念はより流動的な意味を持つようになりつつある。人々の中には、物置部屋で簡易的なスペースを作ったり、読んでもいない本を飾った棚を置いたベッドルームの一角を使ったり、あるいは、Web会議システムの背景をぼかす機能を利用してキッチンのカウンターや車、ガレージを使う人までいる。

テクノロジーへのアクセスとよりリラックスした労働文化が南アフリカでのリモートワークを推進

パンデミックが始まってから1年が経ち、SSA地域の各国では、様々な形で「自宅が新たな仕事空間」トレンドに対応する動きが展開されている。現在、南アフリカの不動産市場は低迷しているものの、一部の消費者には在宅勤務用に使える余分なスペースを備えた新居を探す動きが見られる。また、ミレニアル世代のリモートワーカーの中には、いわゆる「ズームタウン」と呼ばれる小規模な場所に移住し、早期退職のような生活を楽しむ者もいる。「ズームタウン」とは、より静かな暮らし、より広々とした住宅、穏やかな屋外スペースがあり、ビーチや自然保護区に近いこともあるが、都心のビジネス街や都市から適度な通勤距離にある小規模な地域のことである。また、事務所のあり方についても、リースの契約を更新しなかったり、より小規模なオフィスへの移転を選択する企業もある。

対照的に、ナイジェリアやケニアでは、伝統的な職場慣行が根強く、ほとんどの雇用者と労働者は9時から5時までの物理的なオフィスワークを遵守しようとしている。この背景には、技術インフラが不十分であるため、リモートワークの効率性が制限されていることがある。ただし、その中でも在宅勤務は拡大しており、コワーキングスペースの利用者は着実に増えている。これらのコワーキングスペースでは、日単位、週単位の利用パスから、貸し切りや共用の仕事空間として月単位で利用できるプランまで、様々なオプションが用意されており、スタートアップ企業や、利便性と貧弱なインフラに対する解決策を求める少数のリモートワーカーから注目されている。中には、コピーや印刷サービス、無料の飲み物、個人用ロッカーなどの特典を提供しているコワーキングスペースもある。

SSA地域でインターネットが利用できる世帯の割合(2020年)


Source: Euromonitor International Passport Database

新たな仕事空間で働く消費者の需要に応える製品やサービスの提供が鍵となる

雇用者が従業員にとって安全な働き方を模索する中、企業にとっても多くの商機が生まれている。例えば、商業地域以外での複合用途開発や改築を再考したり、ゴーストキッチンなど、ズームタウンにおけるニーズに応えることも可能となる。この他にも、コワーキングスペースや主要な郊外の場所にリフレッシュメント用のキオスクを設置したり、飲み物や軽食を事前決済で注文するサービスや、ワークライフバランスをサポートするため、安全な場所で行う心身の健康を整えるためのイベントを広めることなども挙げられる。

南アフリカでは、Ergotherapy、Formfunc、Ergolabといった企業が人間工学に基づいた家具を提供しており、例えば、昇降デスク、フレキシブルに動かせるモニターアームなど、従来の固定された職場空間からより動きのある職場環境への移行をサポートしている。また、ローテーション勤務やリモート/在宅勤務をサポートするグッズやサービスも重要視されていることから、タクシーの週単位での契約、有料のミーティングスペース、また、機器のレンタルなどもある。

「思慮深い倹約家たち」:価値を重視し、財布の紐を締める

SSA地域の消費者は、パンデミック発生以前より可処分所得が低いことから比較的倹約志向にあったが、 パンデミックにより生計手段を失った人々が生まれたことで、その傾向はさらに高まった。これは、多くの消費者が、万一の時を想定して貯めていた貯金があればそれを切り崩したり、基本的なニーズを満たすために裁量的な支出を後回しにしていることを意味する。

伝統的に、SSA地域における世帯は、他の地域へ移り住んだ親族からの送金が一般的であることから、核家族や物理的な同居、地理的な境界線といったことで定義することは難しい。悪化する経済状況や、(特に農村部の親族で顕著な)経済的に逼迫された世帯の増加、また、すでに医療を十分に受けられない多数の非正規雇用者達たちの健康問題も増加しつつあり、親族のサポートがこれまで以上に重要になっている。このような状況の中、消費者はただでさえ乏しい家計収入でやりくりする必要があるため、コストパフォーマンスの高い製品やサービスへの需要が高まっている。

一人当たりの年間可処分所得(単位:米ドル)


 Source: Euromonitor International Passport Database

消費者との間に生まれる距離的、価格的そして決済時に生まれる障壁を乗り越えるべくデジタルサービスを活用する小売業者たち

価値の追求は、SSA地域の中でも様々な方法で行われている。消費者の可処分所得が高く、購買力が比較的高い南アフリカでは、外出機会を減らしつつお得に買い物をするため、まとめ売りやプライベートレーベル製品が注目されるようになった。Shoprite Group(ショップライトグループ)のような安さを売りにする小売業者は、SMSで親族に直接送信できるバーチャルバウチャーを導入するなど、懐事情が厳しい消費者にこれまで以上にアピールをしている。一方、高価格の製品を扱う小売業者であるWoolworths(ウールワース)は、鶏肉の価格を下げるなど、特に必需品周りのプロモーションを増やしている。また、モバイルクーポンも広まっており、Sanlam Groupとショップライトグループのように金融機関と小売業者の提携によるものや、Unilever(ユニリーバ)のWuhu Dealsというプラットフォームのようにメーカーが提供するものなどもある。

ナイジェリアでは、昔ながらの個人商店のような小売チャネルが主流であり、消費者は近所の食料雑貨店において、後払いシステムの恩恵を受けている。一方、ケニアでは、お得感の提供には、値下げや1つ買えば1つ無料のセールなどの他に、買い物プロセスの改善が求められている。最近では、Eコマース利用の際に携帯電話で支払いができるM-PESA(エムペサ)というサービスを使用する消費者が増えており、国内のモダントレードもそれに対応し、より価値の高いサービスを消費者に提供すべく配送会社と提携を結ぶなどしている。例えば2020年3月、大手食料雑貨小売店のNaivas Ltdは、配送業者のGlovo(グローボ)と提携して、1,000ケニア・シリング未満の注文の場合は配送手数料を無料とするサービスを提供した。また、スーパーマーケットのTuskysは物流デジタルプラットフォームを提供するSendy(センディ)と提携し、WhatsApp経由で注文された商品を配送できるようにした。従来の小さな食料雑貨店( Dukas )も、農村部や都市周辺地域の消費者がカタログなどで注文した商品をそれらの店舗でピックアップできる仕組みを提供するCopiaというB2C小売業者らと続々と提携を結んでいる。

製品そして購買プロセスの改良がSSA地域の消費者を惹きつける

COVID-19の発生に伴い様々なレベルのロックダウン措置が講じられたり、安全、健康にもたらされる不安感や景気の変動がある中、企業は迅速に新しいシステムを採用し、消費者の購買習慣、倹約的な懐事情、デジタル意識の高まりに合わせた製品やサービスの提供を求められている。これらが企業や支援サービスに与える影響や機会は多岐にわたる。例えば、ソーシャルメディアを活用することによるカスタマーサービスの効率化(WhatsAppでの注文・請求・顧客対応、Facebook MarketplaceやInstagramでのマーケティングなど)、オムニチャネルでのプレゼンス向上、非接触型かつスピーディーなラストワンマイル配送(指定した購入金額までは配送手数料が無料など)、また、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の合意事項をもとに、地域や国レベルでのパートナーシップを通じた製品ポートフォリオや組み合わせるサービスの改良などが挙げられる。プライベートレーベル製品や高品質かつお手頃な製品を提供するブランドの拡大もまた重要である。

これらを検討することが、長期的には、パンデミック後に続いた販売不振を解消し、一定の売上を確保することにつながるだろう。

企業に必要なのは、テクノロジーを活用して混乱を予測し備えること

サブサハラ・アフリカ地域では、人口の21%が18歳から29歳の若年層であり、利便性や革新性、テクノロジーによる影響力が大きい。 ただし、これらの傾向がどのように進んでいるかは、貧困レベルの高さや格差の大きさ、失業率の高さなどもあり、地域内の国ごとによって異なる。

今回取り上げた『2021年 世界の消費者トレンド』の2つのトレンドを、SSA地域の視点で分析すると、物理的には自宅周りにいることが増えたことから、そこからモノやサービスにアクセスすることを望む消費者のニーズ、そして購買力の強さにバラつきがある地域内の消費者層のため、それぞれに所得レベルに対応したビジネスソリューションおよび製品やサービスへのニーズの高まりが見えてくる。経済が再開に向かう中、ユーロモニターの『世界の消費者トレンド(GCT)』は、全ての分野におけるあらゆるステークホルダーが回復力と順応性を持つ必要性を強く訴えている。我々が2021年以降に注視すべきは、これらの消費者トレンドがいつまで続くかではなく、それらがどのように進化し、未だ不安定な世界情勢の中で如何に他のトレンドに影響を与えたり、新しいトレンドを引き起こすかであろう。

自宅が新たな仕事空間」と「思慮深い倹約家たち」トレンドについての詳細は、弊社の無料レポート『2021年 世界の消費者トレンドTOP10』をご覧ください。また、これらのトレンドが、自社の事業や製品分野にどのような影響をもたらすかについて、詳しい調査にご興味がある方は、こちらまでお問合せください。

その他の日本語版記事については、こちらよりご覧頂けます。

(翻訳:横山雅子)