世界の景気回復指数:国によって異なる状況

※本記事は英語でもご覧いただけます:Global Recovery Tracker: Uneven Prospects for Recovery

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックは第二次世界大戦以降、最も深刻な世界的景気後退をもたらしている。2020年第4四半期(2020年10~12月)に、ウイルスに有効なワクチンの接種が開始されたことでその終焉が見えてきたものの、2020年の年末に発生した地域レベルのパンデミック第2波の影響はとりわけ大きい。欧州や北米を中心に再び規制やロックダウンを講じる必要に迫られるなど、景気回復に向けた課題は山積している。

ユーロモニター(以下、「当社」という。)の景気回復指数(2019年の水準を100として、スコアがそれ以上である場合は消費者の需要が完全に回復したとする)を見ると、2020年第4四半期には、スウェーデン、スイス、中国、オーストラリア、トルコの5か国で同指数のスコアが100を超えるものとみられている。これらの経済圏で景気の上向きが予想される背景には、消費者信頼度の強い回復がある。ただし、これらの国々の中で消費者信頼度以外の経済活動(消費支出、小売売上高、GDP、労働市場)が2019年の水準を上回るのは、中国だけである。

また、オーストラリアはパンデミックの第2波を抑えることに成功し、低い感染率を維持していることから、消費者および企業の信頼感が高まり回復基調が強まっている。その他の国を見ると、地元、地域レベルでCOVID-19の感染が拡大しており、当社の景気回復指数がカバーする48か国中13か国において、第4四半期の回復指数は前四半期(2020年7~9月)より悪化する見通しだ。

2020年第4四半期 景気回復指数が高い国TOP10

Source: Euromonitor International from national statistics/Eurostat/OECD; Euromonitor’s Recovery Index. Note: The bubble size indicates the country’s GDP in 2019. Data for 2020 are forecast.

主要経済圏の回復への道のり:国によって異なる事情

・ ブラジルの経済活動は金融・財政刺激策が功を奏し、第4四半期は前四半期より多少の回復が見込まれる。一方、実質GDPや消費支出、小売売上高はパンデミック以前の水準を大幅に下回る。消費者需要は増加が見込まれるものの、記録的な失業率により完全な回復は当面先のことになる。第4四半期における同国の回復指数は91.5となり、前四半期の90.2より上昇する見通し。

・中国の回復指数は第3四半期時点で2019年の平均水準を超えており、第4四半期ではさらに上昇するとみられる。第4四半期の経済活動(実質GDPから計測)は2019年の平均水準より8%高く、第3四半期に比べると成長速度は鈍るものの、当社がパンデミック発生前に予測していた数値に近づく見込み。

・ドイツの回復指数は第4四半期に95.9に達し、前四半期の95. 4から僅かに上昇する予想だ。同国の景気回復への道のりを支えているのは輸出で、第4四半期には前年同期比で23%増加すると見込まれており、その大部分は中国からの製造業新規受注が増加していることに起因している。

・インドは、金利の安定と大規模な経済刺激策の組み合わせによって着実に経済回復に向けて前進しているものの、なお重要な課題が残る。第4四半期、インドの実質GDPは前四半期から3.5%増加する見込みだが、前年同期比からはまだ9.8%低い。同国の回復指数は第4四半期に88.3となり、前四半期の84.4より上昇する見込みである。

・日本経済の見通しは引き続き安定してはいるが、一進一退の状況だ。良い成果が得られた部分を見ると、政府による大規模な財政刺激策および中国経済が大幅に上向いたことによる輸出の回復に後押しされ、個人消費と小売売上高が堅調である。一方、同国を襲っているCOVID-19の第3波の影響は大きく、今後の見通しに影を落としている。第4四半期、同国の回復指数は91.1に達し、前四半期の88.0より上昇する見込みだ。

・米国では、経済活動は減速傾向にあるものの、消費者信頼度の増加が見込まれるため、第4四半期の回復指数は大幅に改善し95. 0に到達するとみられる。2020年11、12月に実施されたCOVID-19ワクチンの治験でその有効性が認められたという報道は、2021年の中頃までに大規模接種が実施されることの現実性を高めると同時に、パンデミックの終わりが見えない人々の不安感を和げた。これは、2021年初頭までに合意が予定されている新たな財政刺激策と併せて、第4四半期の消費者信頼度を高める要因となった。

・反対に、第4四半期の英国の回復指数は前四半期の87.7から86. 6に低下すると予想されている。背景には、2020年11月にイングランドで講じられた2度目のロックダウンとブレグジット(英国のEU離脱)による先行き不透明感があり、2020年最後の四半期における経済活動への影響は避けられないとみられる。第4四半期の経済成長率を見ると、前四半期比で実質ベース1.3%しか伸びず、同国が最初のロックダウンを解除した第3四半期における15.5%から下がる見通しだ。ホスピタリティセクターが英国経済の約80%を占めていることを考えると、ロックダウンとソーシャルディスタンス対策が総生産高に与えた影響は大きい。

主要7か国の洞察

回復はスローペース

第3四半期、多くの国々でロックダウン措置が緩和され、経済は急速に回復した。しかし、依然として猛威を振るう新型コロナウイルスは第4四半期に第2波、2021年初頭には第3波をもたらし、各国は再びロックダウンを迫られた。これによる景気回復の停滞は避けられないだろう。当社の見解では、企業や個人がコロナ禍の状況に順応してきていることから、ウイルスの第2波、第3波による経済への打撃は第1波と比べて穏やかになるとみている。ただし、健康危機が過ぎ去ったわけではなく、景気回復は脆弱に転じやすいといえる。

第4四半期以降、景気の回復速度を左右する要因は次の2つになると思われる。1つは短期的なもので、各国が経済立て直しの最中、どれだけ早く第2波、第3波を抑えることができるかが、景気後退の落ち込み度合いを決める。もう1つは中期的なもので、ワクチンがどれだけ多くの人に行き届くかであり、国境を越えた集団免疫が獲得できればより力強い回復につながる。

当社のベースラインシナリオ、または、可能性が最も高いシナリオを基にした将来予測では、2020年に発生した世界レベルのパンデミックが地域レベルで第2波、第3波を引き起こした場合、ほとんどの国の経済状況や消費者活動は、2021年の年末になっても2019年の水準を下回るとみられている。企業はこの景気回復におけるタイムラインを念頭に置き、状況に応じて自社のビジネス計画や戦略に組み入れていく必要がある。

ユーロモニターの景気回復指数

ユーロモニターの景気回復指数は、経済状況および消費者活動の概要を読み解くコンポジット・インデックス(CI)であり、主要な48経済圏における消費者需要の回復を予測できる。同指数はGDPと消費者需要を決定付ける要素(雇用者報酬、消費支出、小売売上高、消費者信頼度)を考慮しており、スコアは2019年の四半期単位の平均値に対する相対的な変化を計測している。同スコアが100以上である場合、経済生産高、労働市場、消費支出の全てが2019年の水準と同レベル、もしくは超したことを示しており、景気が完全に回復したといえる。

「景気回復指数」内訳
カテゴリー比重フォーカス項目
経済活動20%国内の労働者や資本が生み出すあらゆるものに関する広義の指数となる、実質GDP成長率の実績値および予測値
雇用者報酬20%政府からの金銭的支援を除く世帯の主要な財政源を追跡できる、四半期ごとの就業者数と平均労働時間
消費支出25%実質ベースで消費支出を正式に測るうえで最良の指数となる、四半期ごとの民間最終消費支出
小売売上高25%景気動向と消費支出の強さをタイムリーに測ることができる、季節変動調整済み実質小売売上高データ
消費者信頼度10%各国の消費者が現状をどう感じているか、いつになれば将来を楽観視できるようになるのかを考察する要素となる、標準化された消費者信頼度指数

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