ロックダウンから1年、回復基調にある中国市場の分析:一般消費財・サービスセクター

※本記事は英語でもご覧いただけます:China in Recovery One Year on from Lockdown: Consumer Goods and Service Sector Analysis

ユーロモニター(以下、「当社」という)の景気回復指数で中国の指数を見ると、2020年第3四半期(7月~9月)時点で、実質ベースの経済生産高、労働市場、および消費支出において既に新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック発生前の水準に完全に回復しており、世界の主要経済国の中でいち早く回復基調に入ったことがわかる。しかし、COVID-19は中国の一般消費財およびサービスセクターに大きな影響をもたらし、消費者の衛生面や免疫力、消費行動に対する趣向や習慣をがらりと変えた。

当社のマクロ経済モデルによれば、2020年第1四半期(1月~3月)に大規模なロックダウンや店舗閉鎖が行われると、同期の小売売上高は大幅に下落し、実質GDPは6.4%減となった。しかし、第2四半期(4月~6月)に新規感染者数が減少し始めると、各種施設は営業を再開し、経済活動にも再び活気が見られるようになった。それ以降、中国経済は力強いV字回復を見せている。

Source: Euromonitor International – Global Recovery Tracker. Note: Score of 100+ indicates a full recovery back to 2019 levels.

一般消費財とサービスセクターの市場動向は似ているが、各業界ごとに見ると、それぞれの特色がよく表れている。例えば、コンシューマーヘルス業界のように、おおよそ予想された通りの成長軌道を描いている業界もあれば、高級ブランド製品業界のように、驚くべき回復力を見せた業界もある。小売流通業界を見ると、2020年はEコマースが未だかつてないほど盛り上がりを見せ、企業のデジタル化に拍車をかけた。下記セクションでは、中国現地の業界動向に精通した当社アナリストによる洞察を紹介する。2021年、各国は今なお続く世界的パンデミックの中で回復に向けて前進している。ビジネス計画を立てるにあたり、これら中国の景気回復パターンから学べることは多いだろう。

ビューティー・パーソナルケア業界:強い回復力を支える健康美ニーズの高まりと地元企業の敏捷性

アナリスト:ケリー・タン

中国のビューティー・パーソナルケア市場は、2020年4月に早くも回復傾向を見せており、それにはブランドや企業が新たなマーケティング戦略や積極的なプロモーションを駆使し、Eコマースを通して消費者との接点を増やすことに成功したことが大きい。また、2020年は免税店の休業や海外での支出機会の減少により、高級美容製品を地元で購入する人が大幅に増加した。

最も強い回復力を示した製品カテゴリーのひとつが、スキンケア製品である。ブランドや企業は、マスクを着用することが多い消費者に対し、刺激から肌を保護する必要性を訴え、肌の免疫力向上というコンセプトを積極的に活用している。健康美ニーズの高まりは今後も続くと見られており、マスクの着用もより頻繁になると想定されることから、より細やかな肌悩みに対応する製品が求められている。2020年4月以降、カラー化粧品カテゴリーにも回復が見られたが、これにはマスクを着けた状態だと目以外の部分がほとんど隠れてしまうことから、未だかつてないほどアイメイクに重点が置かれるようになったことが背景にある。

Source: Euromonitor International – Beauty and Personal Care Forecast Dashboard

今後、ビューティー・パーソナルケア企業が先行き不透明な中で強い回復力を維持するために特に重要視すべきなのは、自社のビジネス戦略を加速するデジタル化に順応させていくことである。型破りな方法で優れた業績を残した地元ブランドを見ても、急速に変化する市場の中で、デジタル化への敏捷性がいかに重要であるかは明らかだ。

家庭用電化製品業界:健康意識の高い消費者をターゲットにした新製品に加え、建築業と実店舗の再興が回復に拍車をかける

アナリスト:レオ・チェン

2020年第2四半期以降、中国の家庭用電化製品市場は強い回復基調にある。これに伴い、我々は同市場に対して楽観的な見通しを立てている。

Source: Euromonitor International – Consumer Appliances Forecast Dashboard

高額な大物家電製品を購入するにあたり、実店舗は今でも消費者に重要視されているため、2020年第2四半期にロックダウン規制が緩和され、客足が戻ったことで受けた恩恵は大きい。また、中国の家電家具内装に関する消費刺激策の下で建築工事の再開が促されたことも、回復基調を強める一因となっている。さらに、先送りにしていた改装需要が増加したことで、小売販売店での購買欲も刺激されている。メーカーもまた、第2四半期以降は新製品を市場に投入するようになり、消費者のより良い製品への買い替え欲を高めつつある。健康意識の高まりに注目した製品も発売されており、例えば、最新の食品貯蔵技術で衛生的に食べられる製品や、スチーム処理することで衛生的に洗濯ができる製品、56℃で自動的に洗浄および換気する機能の付いたエアコンなどがある。ここ1年で健康に関する懸念が急激に高まったことを受け、健康的な生活を求める声は今後も続くと予想されることから、新製品を発売する際には、長期的に見て衛生面で強い性能があるかどうかが焦点となるだろう。

OTCヘルスケア業界:かつてないほど高まる免疫力への関心とオンライン販売が今後の成長を支える

アナリスト:ケリー・タン

中国のビタミン剤・ダイエタリーサプリメント市場の2020年第1四半期における小売売上高を見ると、実店舗の多くが閉鎖に追い込まれたにもかかわらず、名目ベースで4%増加していることがわかる。同年第2四半期には実店舗も営業を再開し、消費者もロックダウン以前のように店舗に戻ってきたことから、比較的早い業績回復につながったといえる。消費者の健康的な生活を求める傾向や予防衛生への関心の高まりにより、ビタミン剤およびダイエタリーサプリメントに対する需要は、今後の予測期間においても続くことが予想される。

中国の消費者は未だかつてないほど免疫力に高い関心を示しており、2020年第1四半期に見られた消費者の買いだめ行動の後も、年間を通して免疫力向上を訴える製品の売上が増加している。COVID-19危機の中で美容と健康の境目がさらにあいまいになり、より多くの消費者が身体の内側からの美しさをうたった美容サプリメントを求めるようになった。2020年の同業界の最新トレンドには、皮膚弾力性の向上や皮膚代謝の改善を目指した、肌のデトックスやアンチエイジング、抗糖化などがある。

第1四半期に実店舗が閉店を余儀なくされた際には、ECプラットフォームやデジタルヘルス関連のアプリで無料相談や薬剤の迅速な配送などのサービスを提供し、実店舗の損失をある程度緩和させることに成功した。中国のビタミン剤・ダイエタリーサプリメント市場で現在最も多いのはEコマースチャネル経由での売上だが、同チャネルは予測期間を通して、今後さらに拡大し続けていくだろう。

DIY製品、食器、家具等業界:回復とさらなる成長のカギを握るのは、デジタル化と衛生ニーズに応えるイノベーション

アナリスト:レイチェル・ホー

DIY製品、食器、家具等業界は、これまで実店舗における店内体験にかなりの重きを置いてきたため、売上も店頭販売に頼るところが大きく、2020年は大変厳しい年であったといえる。特に、家具や、カーペットなどの床に敷く製品カテゴリーについては、同年第1四半期に講じられたロックダウンに伴う損失が大きく、今なおEコマースによる売上では十分に補えていない。しかし、第2四半期に新規感染者数が急激に減少し経済活動が再開したため、同業界の売上高も部分的に伸び、回復速度は前四半期を上回った。ただし、ホームオフィス家具や家庭用品といったカテゴリーは例外で、パンデミックによって消費者が外出自粛や在宅勤務、外食控えといった行動を取るようになったことで需要が高まり、業績を伸ばしている。

同業界内のメーカー企業は、パンデミックやロックダウンがもたらした様々な課題に対し、明確なデジタル戦略や新製品戦略を立てることで対応してきた。彼らは伝統的なデザインや計測作業といった長年の課題に取り組むべく、購入チャネル以外の用途でもデジタルソリューションの導入を進めていいる。衛生に対する消費者の関心が高まるにつれ、メーカー企業は衛生ニーズに合わせたイノベーションに注力するようになり、特に家庭での衛生にフォーカスした新製品を続々と打ち出している。

2021年以降、消費者マインドが高まるとともに、同業界は回復基調が続くとみられる。COVID-19が中国の消費者の考え方や行動に長期的にもたらす影響は大きく、例えば、環境に優しく抗菌性のある製品が市場に投入される一方、自宅が生活の拠点となるトレンドに応えるべく、自宅環境の質を高めるため、機能性や見た目の美しさを重視する傾向も続くだろう。

ハウスホールドケア業界:より安く、衛生面に優れた製品が渇望される中、製品カテゴリーによって状況は異なる

アナリスト:レオ・チェン

2020年、COVID-19により個人の可処分所得が圧迫され、消費者は製品価格に敏感になり、買い物をする際には、購入する品物の優先順位を見直すようになった。その一方で、消費者の間で感染対策として衛生意識が瞬く間に高まると、殺菌効果のある製品に注目が集まるようになった。

例えば、洗濯洗剤や手洗い用食器用洗剤といった製品は、使用頻度は高いものの直接的な殺菌効果は期待されないことから、より安価なものが選ばれるようになった。このような消費者ニーズに応えるため、オンラインと実店舗の両方で熾烈な価格競争が繰り広げられている。当社のオンライン製品価格追跡プラットフォームViaを見ると、洗濯用液体洗剤、タブレット型洗濯洗剤、およびその他洗濯洗剤のオンライン上のSKU価格の中央値は大幅に下落している。これにより、洗濯用液体洗剤とタブレット型洗濯洗剤の2カテゴリーの売上高は単価の下落に引きずられる結果となった。ただし、安価なものを求める風潮は、景気の回復や外出自粛による変化が薄れるにつれ、経時的に元に戻っていくものと思われる。

Source: Euromonitor International – Via

衛生意識の向上に伴い、消費者は洗濯用サニタイザーや家庭用消毒液、トイレ洗浄剤といった製品を積極的に採用するようになった。ただし、彼らは殺菌効果を重んじるため、価格が安くても殺菌効果が低い製品の購入には消極的で、よりダイレクトに衛生ニーズに訴える製品を選ぶ傾向がある。高まる衛生ニーズとともに、単価も上昇し続けていることから、これら製品カテゴリーの前年比成長率は2019年のそれより高い。パンデミック収束後、衛生ニーズは平常時の状態に戻る可能性もあるが、一気に広まった衛生意識は長期的に根強く残り、同業界は着実に成長していくだろう。

高級ブランド製品業界:国内に留まる若年富裕層が国内市場の成長を促す

アナリスト:ケモ・ゾウ

2020年、中国の高級ブランド製品市場にとっては浮き沈みの激しい年であった。第1四半期は厳しいソーシャルディスタンス対策により売上高が伸び悩んだ一方、それ以降は予測を上回るスピードで回復を見せた。

富裕層の高級ブランド製品への支出は、同製品分野においてますます高まる若年層の影響もあり、同年第1四半期の損失を相殺して余りある利益を生み出し、同年下半期も市場を活気づけた。中国政府の政策もまた、市場成長の明らかな原動力となっており、政府がコロナ発生前から国内消費の活性化に力を入れていたことも、成長の要因となっている。特に、海外でのショッピングの機会が厳しく制限される中、免税制度の改定や輸入関税の引き下げ、海南島の自由貿易港の設置といった政策を打ち出し、コロナ収束後の国内におけるリベンジショッピングの下地を作っている。世界的なパンデミックが必然的に消費パターンに何らかの恒久的な変化を残していく中、特に中国人消費者の高級ブランド製品への支出については、その一部を国内で行うようになるだろう。

高級ブランドがコロナ後に消費者を獲得していくためには、デジタル化の加速とともに、若い世代との積極的な関わりが重要になる。高級ブランドのグループ企業が独自で立ち上げた取り組み以外にも、同国の国内テクノロジーコングロマリットと高級ブランドが提携し、同市場を盛り上げている。世界的なパンデミックが同業界の形を変える中、中国は新たな小売店のあり方を試す場所としても注目されている。2020年、高級ブランド製品業界の回復は最速ではないにせよ、あらゆる業界の中で最も急激な変化を遂げ、止められない成長を見せつけたといえる。

小売流通業界:デジタル化が照らす業界再興への道

アナリスト:フェイチ・ルオ

2020年、小売流通市場の売上高は名目ベースで微減のマイナス0.8%となり、既に昨年とほぼ同水準にまで回復している。この背景には、パンデミックが効果的に管理されたことと、強い消費刺激策が功を奏したことがある。Eコマースカテゴリーは、実店舗の損失を補って余りある売上で、小売市場全体の中でも圧倒的に高い成長率(名目ベースで20%増)をたたき出した。

実店舗における売上低迷に伴い、小売業者はオンライン販売に迅速に切り替るべく、オムニチャネルや、消費者をウェブサイトから実店舗へ誘導するO2O(Online to Offline)といった新たなビジネスモデルを採用するようになった。その中で最も活用されているのが、ライブストリーミングを販売プラットフォームとする方法である。ソーシャルコマースは、COVID-19危機の中で孤立しがちな消費者を取り込み、ソーシャルメディアを通して消費者同士のコミュニティを築く手法で注目を浴びつつある。また、共同購入という新しいソーシャルコマースモデルも台頭している。これは、WeChat(ウィーチャット)で作られたグループの中で、指定されたリーダーがグループ内の人に代わってまとめて注文をするという仕組みであり、食料雑貨の売上向上を目的に、多くの小売業者が採用を始めている。

近い将来、Eコマースの市場規模はさらに拡大し、実店舗は人々にとって、より体験を楽しむための場所だという認識が強まるかもしれない。変わり続ける消費者行動を考えれば、2021年以降、ほとんどの小売企業にとって、デジタル戦略が欠かせないものになることは間違いないだろう。

旅行・観光業界:国内旅行が回復の原動力に

アナリスト:ハン・フー

中国の旅行・観光業界は、2020年2月にほぼ全てのサービスが停止状態となったものの、4月には活気を取り戻し、著しい回復を示した。中国人消費者の海外旅行商品に対するペントアップ需要が国内市場へと移行したことで、国内旅行が業界再興の主要な足掛かりとなっている。ロックダウンによって自然と再びつながることを切望する人が増えたことから、特に中国人観光客に人気な観光スポットは、山、湖、海岸となっている。

交通機関も総じて強い回復力を見せており、総交通量は昨年11月までにコロナ発生前の水準の約70%にまで回復している。航空会社も重点的にプロモーションを行い、国内における航空機を使った旅行数のV字回復に貢献した。

今後は、旅行はしたいが安全が最優先であるという人々の考えにどう対処していくかが重要になる。中国政府はパンデミックの再来を避けるため、2021年の旧正月休暇は移動を控えるよう呼び掛けている。全国的なロックダウンの可能性は低いが、人々の感染防止意識が高いため、旧正月休暇期間における同業界の売上高がコロナ前の水準に戻ることは難しいだろう。国内観光は、今後1、2年程で国内旅行数がコロナ発生前の水準に戻ると見込まれており、同業界全体の回復の原動力になると期待されている。

企業の業績回復には、デジタル化への敏捷性と消費者の心身の健康に重点を置くことが不可欠

企業はデジタル化の方向性を見直す必要がある。Eコマースの強化は、コロナ後の市場において構築される敏捷なデジタル化の側面のひとつにすぎない。今回のパンデミックのように混乱を極める出来事に直面した場合、企業が敏捷性を形成し回復力を高めるためには、消費者と幅広くつながる手段や、実店舗型ビジネスのあり方を変えるデジタルソリューションが極めて重要になるだろう。

心身の健康に対する消費者の意識は高まり、ますます人々の優先事項となりつつある。このトレンドは今後も勢いを増すだろう。多くの消費者が、今後も支出に対して慎重な姿勢を取り続けることが予想される中、ホリスティックな健康、自宅の衛生、および内面から感じる幸福感を求める方向へと長期的にシフトしていくため、企業は、それらを業績回復やイノベーション戦略の重点項目にすることが必要となるだろう。

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(翻訳:横山雅子)