ラテンアメリカとアジア太平洋地域のフードデリバリー:パンデミック後も続くトレンドとは

※本記事は英語でもご覧いただけます:Foodservice Delivery Trends Outlasting the Pandemic in Latin America and Asia Pacific

世界中のレストラン等飲食店にとって、ホームデリバリー事業への参入は、パンデミック下で営業を継続し、また新型コロナウイルス(COVID-19)収束後も消費者に求められる店であり続けるための、欠かせない手段になっている。過去5年間、世界のフードサービス業界におけるデリバリーの売上高は成長を続け、その拡大をけん引してきたのはラテンアメリカとアジア太平洋地域である。従来、ホームデリバリー事業は飲食店の中でもチェーン店が採用するビジネス戦略であるという認識が強かったが、前述の2地域では、デリバリー対応が可能な飲食店を検索できるアプリが開発されたことにより、COVID-19パンデミックの状況下でも新たな客層にアプローチすることが可能になったことから、多くの個人経営飲食店も同事業へ乗り出すようになった。

フードデリバリーが拡大した主な要因

•  スマートフォン利用者の多さ:2020年、世帯あたりのスマートフォン浸透率における世界の上位10ヵ国は、全てアジア太平洋地域かラテンアメリカの国である。
•  個人経営の店舗の多さ:アジア太平洋地域とラテンアメリカは個人経営の飲食店が多く、世界の個人経営フードサービス店舗数の80%を占める。
•  宅配業者:これら2地域における配送手数料は、他の地域に比べて低く、その要因のひとつが、低価格で配送を請け負う宅配業者の多さである。経済危機にある国からの移住者が多いことも、こうした宅配業のようなギグエコノミーを助長させたといえる。
•  人口密度の高い都市:世界の最も人口密度が高い都市の50%は、アジア太平洋地域かラテンアメリカの国にある。

フードサービスのデリバリーによる売上 2016年~2020年

Source: Euromonitor International Consumer Foodservice Restatements, August 2020

個人経営店のデリバリーアプリ登録によって拡大する市場

パンデミック発生前は、外食ブランドや企業にとって、どのデリバリーアプリと提携するかが重要な課題であったが、ロックダウンが長引く現在、なるべく多くのデリバリー手配業者と提携し認知度を上げることが重要になりつつある。これにより、デリバリーアプリに登録する飲食店数は増加し、消費者にはより多くの手頃な選択肢がもたらされるようになった。ただし、低い配送手数料が消費者を呼び込む一方で、飲食店は高いコミッション料を取られることもあり、最終的な利益は少ない。そのため、外食ビジネスが業績回復に向かうためには、価格戦略を立てること、自宅での体験に価値をもたらすこと、新たな消費者セグメントからの需要に応えること、そしてデジタルイノベーションを通してロジスティクスを強化することなどが極めて重要になるだろう。

自宅での食事体験を向上させる

パンデミックの中、消費者はフードデリバリーをより頻繁に利用するようになった。かつては特別な機会に限り利用していた消費者にとっても、新たな習慣になりつつあり、特別感が減るとともに、フードデリバリーの体験が変わりつつある。また、膨大な数の飲食店が掲載されるアプリの中で、自社ブランドに注目を集めることは容易ではない。そうした中でも、自宅でレストランの店内にいるような雰囲気を再現したり、シェフが自宅まで出張してくれるプレミアムな体験を提供するといった、新たなサービスを提供することで価格を上げ、数ある選択肢やディスカウントリストの中でも自社ブランドを目立たさせることが可能である。南米チリのDeCalleは、アジアの屋台料理を提供するレストランで知られているが、自宅でもレストランの雰囲気を楽しめるよう、カスタマイズ可能な配送専用セットを提供することで付加価値をつけている。同配送専用セットには、2人分の定番メニュー、紙製のランプシェード、オリジナルのSpotifyプレイリスト、そして食べ方を記した説明書きが入っている。デリバリーアプリを使用する消費者がより安い商品を選ぶ傾向が強い中で、DeCalleは同セットを38米ドルで提供している。

フードデリバリーを楽しむファミリー層

2020年、ラテンアメリカとアジア太平洋地域は、平均世帯規模が他の地域に比べて大きく、今後もその傾向が続くとみられている。そして、フードデリバリーは、外出自粛やロックダウンによってファミリー層が主要な顧客グループとなったため、外食ブランドや企業には、子どもから大人まで、幅広い層の味覚に合わせたメニューを充実させることが求められている。また、消費者は、利便性も兼ねたお手頃なファミリー向けセットメニューを好む。セットメニューやファミリー向けサイズのメニューを購入する顧客が増えることは、ファストフード企業にとっては客単価の上昇を意味し、大きな商機であるといえる。メキシコの飲食店ブランドVipsはファミリー向けセットメニューの種類を増やし、自宅で調理できるサイドメニューをリットルやキロ単位で販売することでデリバリーでの売上を伸ばした。

在宅勤務の増加から生まれる長期的な需要

ロックダウンにより在宅勤務を取り入れた企業の多くは、その効率性を考慮し、今後より柔軟な働き方を推進していくだろう。これはフードサービス業界にとって重要な問題であり、ランチで混雑する時間帯の客足に直接的な影響をもたらす。ただし、自宅での時間が増えた消費者にアプローチすることで、商機は十分に見込める。また、飲食店への来客数は今後、減少することが考えられるが、フードサービス業界は企業と提携し、電子マネーの機能が付いたスーパーアプリを活用することで、商機につなげることができるかもしれない。例えば、企業が社員の電子マネーを毎月チャージし、社員はそれを使ってデリバリーアプリに掲載されている飲食店を利用する、といった試みの可能性が考えられている。

世界的に予測される消費者の社会的行動やコミュニティでの行動の変化

Source: Euromonitor International COVID-19 Voice of the Industry Survey, April 2020

外食サービスおよびデリバリーアプリの企業は、フードデリバリーの高い需要が今後も長期的に続くと予想されることを受け、ロジスティクスのあり方を再考している。配送時間の遅延など、デリバリー事業には課題も多い。これらの課題を解決し、商品の品質を落とすことなく配送スピードや物流の管理していくうえで、ダークキッチンの拡大やデジタル決済、テクノロジーがより重要な役割を果たすようになるだろう。

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