ビューティー・パーソナルケア業界におけるサステナビリティの領域:環境への影響から目的の追求まで

※本記事は英語でもご覧頂けます:Spectrum of Sustainability: From Environmental Impact to Social Purpose in Beauty and Personal Care

サステナビリティは環境負荷の軽減というイメージが強いが、新型コロナウイルス(COVID-19)の発生により、社会的、環境的、そして経済的な価値をサステナビリティの領域の中に含めることを目指すという、より包括的なアプローチである「利益の前に目的の追求」という意識が生まれた。主要なビューティー・パーソナルケア市場国は、サステナビリティの流れを牽引していく責任がある。また、ビューティー・パーソナルケア業界でサステナビリティを促進する行動を定着させるには、サプライチェーン全体での大規模な協力とパートナーシップが不可欠となるだろう。

サステナビリティで最も想起されるのは環境負荷の軽減

サステナビリティには、経済、環境、社会の3つの柱がある。ビューティー企業やブランド、および小売業者は、フェアトレード認定(経済面での持続可能性)や地元産原料の使用(環境面での持続可能性)、特定の目標や取り組みをサポートすることで世界中の顧客と社員の両方の福利を支援する(社会面での持続可能性)など、多方面における持続可能な製品特性を通じてこれら3つの柱を活用している。サステナビリティが一般的に環境負荷を軽減することと認識されているのは当然といえるだろう。実際に、ビューティー業界のイノベーションの多くはこの目標を中心に据えている。

「自社にとってのサステナビリティとは?」

Source: Euromonitor International Voice of the Industry Sustainability Survey, 2020, conducted during June 2020.

ビューティーカテゴリー全体に拡大する詰め替え容器のイノベーション

詰め替え容器は、近年行われた最も大きいイノベーションのひとつであり、小規模の独立系企業から中規模の企業、そして多国籍CPG(消費財)企業まで、企業の規模を問わず注目を集めている。詰め替え容器自体は新しいものではないが、包装の無駄を大幅に削減できるため、ビューティーカテゴリー全体で成長と機会の領域へと進化を遂げた。注目すべきイノベーションの例としては、カラー化粧品カテゴリーではCharlotte Tilbury(シャーロット・ティルブリー)の詰め替えリップスティック、フレグランスカテゴリーではViktor & Rolf(ヴィクター&ロルフ)製品などが挙げられる。

フランスのTechniplastが力を入れている詰め替え容器は、ヴィクター&ロルフなど、人気のプレミアム化粧品企業で使用されている。

Image source: techniplast.com

将来を見据え代替包装材を模索する企業やブランド

ビューティー製品のパッケージに最も使用されているのは未使用プラスチックであるが、それに取って代わる代替品へのニーズが高まるなど、代替包装材はビューティー業界の重要な成長分野のひとつである。企業やブランドは、リサイクル可能なアルミニウムやガラスを使用する製品を増やすだけでなく、使用後に回収およびリサイクルされたPCR(post-consumer recycled)素材を使用することも多くなっている。また、サトウキビ、コルク、竹などの生物および植物由来による代替原料を模索している企業やブランドもある。プラスチック不使用のパッケージも人気で、Meiyumeでは、普段はダンネージや卵パックのパッケージとして使用されている古紙や段ボールを再利用したパルプモールド包装を採用している。また、L’Oréal(ロレアル)のSeed Phytonutrients(シード フィトニュートリエンツ)では、段ボールを再利用した包装を採用している。

ビューティー・パーソナルケア製品における世界的な包装形態(2019年)と2014年~2019年の年平均成長率

Source: Euromonitor International

生物または植物由来以外の代替原料には、製造過程で発生する副産物も含まれる。例えば、ロレアルはLanzaTech (ランザテック)とTotal(トタル)と提携して、回収した二酸化炭素を再利用したパッケージングを開発し、産業排出の二酸化炭素を再使用する可能性をさらに高めた。環境への影響を減らすイノベーションは他にも行われており、全てが再利用もしくは再使用可能なごみゼロ包装や、食品廃棄物のアップサイクル、海洋で見つかったプラスチックの再使用、水効率が高く水を一切含まない方法などがある。また、Aptar(アプター)の単一素材(モノマテリアル)で作られたポンプ容器など、モノマテリアルのイノベーションも、ビューティー製品に使われる包装のライフサイクルにおけるリサイクルの可能性を高めることに貢献している。

主導すべきは主要ビューティー市場国

多方面からサステナビリティに取り組むべく様々なイノベーションが行われている中、ビューティー業界はより短い時間軸の中でさらに広範なスケールで持続可能な取り組みの採用を迫られている。主要なビューティー・パーソナルケア市場国は、市場規模が小さな国々に比べて環境フットプリントが格段に大きいことを考慮すれば、責任をもってこの取り組みを主導していくべきだろう。

2020年、ユーロモニターはライフスタイルサーベイ調査の一環として、40か国の回答者を対象にサステナブルもしくはエシカルな行動をしているかどうかについて調べた。この結果を基に、40か国それぞれを先述の各活動を行ったと答えた回答者の割合が高い順にランク付けし、エシカルな行動をするとした回答者が最も多かった国を緑色、中間層を黄色、取り組んでいる回答者が少ない国は赤色とした。そして、ビューティー・パーソナルケアの市場規模の大きい上位10か国の結果に注目し、ビューティー・パーソナルケア分野における環境フットプリントが最も大きい市場と消費者の環境活動の行いを比較対照させた表が下図である。

環境活動別 ビューティー・パーソナルケア市場規模上位10か国(2020年)

Source: Euromonitor International Lifestyles Survey, 2020. Note: Rankings organised by highest percentage of respondents out of 40 countries surveyed. Beauty and personal care markets ranked by 2019 market size in RSP USD current-fixed exchange rates in 2019 prices.

2019年のビューティー・パーソナルケア市場規模上位3か国は、米国(912億米ドル)、中国(717億米ドル)、日本(396億米ドル)であり、これらで世界における同市場の約40%を占める一方、サステナブルな行動やエシカルな行動においては、表でほぼ赤色もしくは所々黄色であることから見て取れるように、最下位層に位置している。特に、米国はプラスチックの使用削減において40か国中最下位、日本も持続可能な包装や目的主導型の企業やブランドから製品を購入するという行動で最下位となっている。対照的に、ブラジルは環境活動を行う消費者が多いことで上位にランクインしており、同国の消費者は日常生活で既に実践している行動もあることから、ビューティー企業の持続可能な取り組みを受け入れやすい可能性が高いことを示している。

各国のビューティー・パーソナルケア市場の環境フットプリントに対する持続可能な活動の普及率を測ることで、イノベーションにより恩恵を受ける可能性のある「持続可能なホワイトスペース」が最も大きい市場(米国、中国、日本など)を明らかにすることができる。また、持続可能性を重視する人々と相互作用しているビューティー企業やブランドの成功例を見つけられる市場(ブラジルや韓国など)を知ることは、他の国のサステナビリティの取り組みを刺激することにも役立つだろう。

サステナビリティの定義は、社会的目的の追求にまで拡大

将来の見通し:ビューティー・パーソナルケア企業

これまでは環境影響を重視する考えが主導となりサステナビリティの取り組みが進められてきたが、COVID-19の発生により、企業が人や地球環境に与える悪影響を単に補償するだけではない新たな意識がもたらされた。2020年、ユーロモニターが実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティ」業界サーベイ調査を見ると、ビューティー業界のサプライチェーンの中では、企業によってサステナビリティの定義が異なることがわかる。特に、企業がサポートする対象が地域コミュニティであるか、社員であるか、または、自社が目的主導型のビジネスを行っているかで大きく分かれている。これらの3つの側面は、COVID-19によって引き起こされた人道的危機の結果、ビューティー・パーソナルケア業界で現在再構想されている、目的主導によるサステナビリティの構成要素の価値を高めている。

今後サステナビリティの課題に取り組むには、先進国市場と新興市場とを問わず、消費者、ビューティー企業やブランド、小売業者、およびサプライチェーン全体の協力が極めて重要になる。米国のビューティー専門小売店であるCredo(クレド)においてサステナビリティを推進する取り組みを率いるMia Davis氏は、「私たちが環境危機に直面している理由のひとつは、パッケージデザイン業者が原料の回収業者と話をしないように、企業間のやりとりや意思決定が行われる場所がバラバラであることである。」と述べている。そして、知識を有し声を上げる今日の消費者は透明性を求め、ビューティー業界のサプライチェーンには、今以上にサステナブルかつ倫理的な未来のために真剣に取り組んでいるか、厳しい視線が注がれるだろう。

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(翻訳:横山雅子)