パンデミック後のオーバーツーリズムを考える – ATTA(Adventure Travel Trade Association)との対談

※本記事は英語でもご覧頂けます:A Conversation on Overtourism Post Pandemic With ATTA (Adventure Travel Trade Association)

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、世界の旅行・観光業界に壊滅的な打撃を与えた。ユーロモニターのTravel Forecast Modelによると、2020年には世界の旅行支出は75%減少したとみられる。2021年は多くの課題が残っているものの、ワクチン接種キャンペーンにより、一部の市場では回復の兆しが見られるようになった。

市場が回復に向かう中、旅行・観光業界では、持続可能な旅行に関する議論が回復をめぐる重要課題のひとつとして再浮上している。

Adventure Travel Trade Association(ATTA)のCEOであるShannon Stowell氏は、オーバーツーリズム(観光公害)が、旅行市場の回復に深刻なリスクをもたらすと考えている。同氏は、ユーロモニターインターナショナルのインタビューに対し、「以前にも混雑していた観光地が、再び人で溢れるようになるだろう」と語っている。オーバーツーリズムは、地元住民の生活環境に悪影響を及ぼしたり、次世代の観光客のために観光地を残すことを阻害するなど、持続可能性に関する問題であるといえる。

人気の観光地域の多くが、パンデミック以前の状態に戻ることを避けたいと考えている。「パンデミック期間に学んだことは、地域コミュニティが変革の必要性を訴えることの重要性である」とStowell氏は話す。

世界の消費者の旅行に求めること(2020年/2021年)

Travel Preferences

パンデミック以前は、都市部の観光地におけるオーバーツーリズムが主に語られていたが、地方への旅行が新たに人気を集めていることから、旅行・観光業界は今後、都市部以外におけるオーバーツーリズムをいかにコントロールするかを考える必要がある。

Stowell氏は、「旅行者には、あまり混雑していない場所を訪問することを薦めることが大切だ」とし、「パンデミック前、(ATTAは)2つのグループをペルーに案内したことがある。それまで、そういった人たちは100%がマチュピチュを訪れていたが、オーバーツーリズムを抑制する目的から、どちらの旅程にもマチュピチュを含めなかった」と話している。観光客を人気の目的地から意図的に分散させることは、観光地をオーバーツーリズムから守るための重要な手段である。

ATTAとTomorrow’s AirのリサーチディレクターであるChristina Beckman氏は、観光客の分散にはテクノロジーが重要な役割を果たすと考えており、「Hipcampなどのアプリでは、普段は見つけられないようなキャンプ場を見つけることができる」と話す。これらのアプリは観光地と観光客の両方にとって役に立っている。

観光地はこれらのテクノロジーを活用し、人気のある場所の混雑を緩和すると同時に、あまり人気のない場所での支出を増やすことができる。また、観光客は、人で混雑する観光地への訪問だけでは得られないユニークな旅行体験を得ることができる。

向こう5年間で旅行観光ビジネスに影響を与えるであろうテクノロジー

Technologies Travel Businesses

旅行・観光業界は、向こう5年間でテクノロジーが果たす役割の重要性を認識している。ユーロモニターの「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:トラベルサーベイ(2021年)」調査によると、回答者の50%以上が、ビッグデータや人工知能が、長期的に旅行や観光に影響を与えるだろうと答えている。

さらに、30%以上の回答者が、同業界に影響を与えるものとして地理空間データを挙げている。観光客をあまり人気のない場所に分散させたい観光地では、混雑状況を追跡するライブデータが、観光客の流れをより良く管理するための鍵となる。

Beckman氏は、オーバーツーリズムの問題を解決するためにアドベンチャーツーリズム(アクティビティ、自然体験、異文化体験の要素のうち、2つ以上で構成される旅行)が担う役割は大きいと考えており、「アドベンチャーツーリズムは、経済発展と自然保護の観点からは素晴らしい機会であるものの、そういった観光客の流入にまだ対応できない観光地もあるため、100%とは言い切れない。本来であれば徐々に変化していくところを、急速に変化させているのが現状である。これを管理する方法として、オープンな話し合いとコミュニティとの関わりが求められている」と述べている。

持続可能な観光についての議論にコミュニティを参加させることは、コミュニティと観光業の両方の観点から、観光地の健全性を長期的に確保するためにも欠かせない。観光地による積極的な観光レベルの管理が行われなければ、反観光感情が燃え上がる可能性もある。

例えば、バルセロナやヴェネツィアではアンチツーリズムを掲げたデモ行進が行われるなど、観光問題を抱えている地域ではこれまでも炎上が起きている。パンデミックによって、健康面での要素が旅行、観光の価値に影響をもたらしており、オリンピックを控えた日本などの市場では、反旅行感情の原因にもなっている。

アイスランドやパラオなどの観光地では、到着時に旅行者に対して旅行中に思いやりや配慮を求める誓約書への署名を求める取り組みが始まっている。これらの誓約書は、「旅行者が観光の主役である」という考えに反発している。

Stowell氏は、「旅行は権利ではなく特権である。休暇に相応しい感覚がカジュアルになりすぎているのではないか。パンデミック収束に伴い、私たちは今、その姿勢を変えるチャンスを迎えている」と話す。

世界各地での観光業の再開は、旅行・観光における持続可能性にとって極めて重要な時期が来ていることを意味している。旅行先での心配りが当たり前になれば、パンデミック前に見られたようなオーバーツーリズムを防ぐことができる。消費者の間で人気が高まっているアドベンチャートラベルは、そうした意識の向上を進めるうえで重要な手段となるだろう。

アドベンチャーツーリズムは、地元コミュニティを尊重し、人里離れた目的地を探すことに価値を置く。旅行・観光業界がパンデミックから持続可能な回復をするためには、このような価値観を取り入れることが重要になる。

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(翻訳:横山雅子)