デジタルビューティーコンシューマーの動向を分析する

※本記事は英語でもご覧頂けます:Understanding the Digital Beauty Consumer

過去10年、ビューティー業界では利便性そしてより多くの有名ブランド、独立系ブランドおよびD2Cブランドの商品を手に入れたい消費者の需要を受け、オンラインチャネルが台頭してきました。デジタルは意識が高いビューティーコンシューマーの情報収集欲を更に刺激しています。また、デジタルビューティーコンシューマーは美容関係の知識に精通するようになっただけでなく、美容業界に積極的に声を上げて影響を与える存在に変貌を遂げました。

デジタル・ディスラプションはパンデミック前から既に業界を変革し得る力であると考えられていましたが、COVID-19の影響によりその勢いはますます加速するものとみられます。パンデミックの発生をうけ、これまでデジタルをあまり利用してこなかった消費者があらゆる市場でデジタルを活用するようになったことが背景にあります。美容分野の企業の間では、デジタルビューティーコンシューマーの動向と美容のデジタル化技術の進化を分析し、ビジネス戦略に組み込むことが最重要事項となっています。

高まるビューティーアプリの可能性とパーソナライズ化

アプリを使った美容のデジタル化は、パンデミック収束後もビジネスチャンスに溢れているといえます。特に、バーチャルのお試しや消費者の口コミ機能は、店舗でのお試しの代わりとなるため、今後も増えていくと思われます。ユーモニターインターナショナルが2019年に実施した消費者サーベイ調査「ビューティーサーベイ」によると、世界のビューティーコンシューマーのおよそ60%が、2019年時点で過去12か月の間にビューティーアプリを使用したことがあると答えている一方で、美容商品以外でオンラインを利用する消費者のビューティーアプリの利用率は22%でした。中国や東南アジア市場ではビューティーアプリと連携したアプリ(例:WeChat)が注目を浴びていますが、美容分野のEコマース市場規模が大きな米国や英国等では、このようなアプリ普及率はまだ低いといえます。ビューティーアプリよりも、予防医療やセルフケアに焦点を置いたアプリや、美容と健康をリンクさせたアプリの方がより人気を集めるでしょう。

パンデミックによって消費者が財布の紐をしめる中、自分に合った商品を選択する事は無駄な買い物を減らし、支出を減らす事につながります。このことからも、デジタルツールでそれぞれの肌の悩みをよりよく理解し、正しい商品の選択につなげることが出来るデジタルビューティーコンシューマーにとって、パーソナライズ化は有意義な機能と捉えられています。例えば、Neutrogena(ニュートロジーナ)のSkin360診断アプリでは、スマートフォン等のデバイスの自撮り機能を使って肌分析ができます。ユーザーはスコア化された自分の肌タイプを理解し、肌の変化の履歴を確認すること、そしてAIが時間を経て算出する美容習慣の推奨を受け取ることが出来ます。ただし、こういったアプリの強みが人々のニーズと合致するのは、ロックダウンが解除され市場が回復期に入った後でしょう。短期的には、エッセンシャル品(必需品)が重要視されており、パーソナライズ化の優先順位は低くなりますが、企業やブランドにとっては、消費者に新たな発見や喜びを提供する機会となり、その効果が裏付けされれば差別化の手段にもなり得るため、依然として商機がある分野といえます。

ビューティー企業のオンライン事業参入

ライブストリーミングはビューティー業界のデジタル化の取り組みの中でも最先端領域です。美容商品を生放送で紹介するのは、有名なQVC(キューヴィーシー)等のテレビ通販のビジネスモデルと似ていますが、ライブストリーミングはリアルタイムで質問や観客からのフィードバックを受け取ることができる点で異なります。

さらに、ライブストリーミング番組の司会には、企業の公式イメージモデルや美容系インフルエンサーと呼ばれる有名人が就くことが一般的です。2020年6月には、中国の大手ECサイトであるJD.comと、オンライン動画共有及びライブストリーミングプラットフォームであるKuaishou(快手)が提携し、インフルエンサーによるショート動画やライブストリームを通してEstee LauderのエッセンスやMACのリップを販促し、JD.comから販売するというキャンペーンを行いました。6.18商戦では、美容製品がJD.comへの訪問顧客数ランキングの上位3カテゴリーに入るなど、ライブストリーミングは美容製品の売上に貢献しました。中国は2019年に国内でライブストリーミングが台頭した事で、このデジタル新分野デジタルにおいて最先端を行く国となりました。2020年7月には世界で初めて、国としてライブストリーミングでのネットショッピングに関する規則を施行しています。

北米もまた、ライブストリーミングへの投資が過熱しそうな地域です。例えば、Estée Lauder Companies Inc.(エスティ・ローダー・カンパニーズ・インク)やL’Oréal Groupe (ロレアルグループ)のブランドが、米国とカナダの自社公式ウェブサイトで商品を購入できるライブストリーミング動画の配信を実施しました。そのうちのいくつかには、既にこれらブランドとタイアップしており、SNS上のフォロワー数も多い美容系インフルエンサーが出演しています。ビューティー業界においてデジタル化が進み、ライブストリーミングといった取り組みが、これからの美容関連商品の買物体験において恒久的な要素となる事から、デジタル化への投資が増加する事が予想されます。

男性用化粧品のビジネスチャンス

パンデミック禍の自宅隔離は、男性用化粧品にとっての好機となりました。ソーシャルメディアの自撮り文化の浸透や人気ユーチューバーらの影響もあり、世界中の男性が既成概念を破り、化粧品を使った美容習慣を始め出しています。ただし、アジア太平洋地域を除く市場の多くでは、店舗で購入できる男性用カラー化粧品の品揃えには未だにバラつきがあり、このことが購買者をオンライン購入に走らせているといえます。

男性消費者は、カラー化粧品の購入場所についてはオンラインチャネルを選ぶ傾向が顕著な一方、ヘアケアやスキンケア商品に関しては、女性および他の消費者の購買習慣と同じようです。男性用化粧品ブランドはデジタルを活用することで、店内で商品を探すよりも、快適にプライバシーが守られた自宅で商品を選ぶことを望む消費者をターゲットにすることが出来ます。

図1 男性回答者と全回答者のヘアケアおよびスキンケア商品のデジタル上の購入場所比較(世界全体、2019年)

Source: Euromonitor International’s Beauty Survey 2019

パンデミックの最中からその後長期的に、より多くの消費者がビューティー・パーソナルケア商品の購入や発見、関連知識の収集をデジタルに頼るようになることから、デジタルビューティーコンシューマーという消費者セグメントは今後、その規模と影響力の両面でますます拡大するでしょう。このセグメントの人口動態に見られる変化もまた、企業にとっては、様々な消費者層とデジタルを活用した関わりを構築し発展させるための新たなビジネスチャンスを作るきっかけになるといえます。