テクノロジーの普及に立ち遅れる先進国、日本の未来とは?

日本は世界第3位の経済大国である一方、深く根差した文化的習慣や高齢化社会といった背景から、テクノロジーの普及に遅れを取っています。消費者像やモバイル決済、スマートテクノロジー市場について、他のアジア市場との対比から日本市場を分析します。

アジアにおける日本の立ち位置-現状と今後

日本は、2000年にはおサイフケータイでモバイル決済サービスに参入していたにもかかわらず、その普及に関しては他国に大きく引き離され、取り残されています。経産省は2025年までにキャッシュレスの割合を現在の2倍に当たる40%まで引き上げることを目標としていますが、障壁も多いのが実情です。まず、偽装通貨の流通量の低さや、クレジットカードを受け付けない販売店の多さが、日本人の現金への依存度を高くしている一つ目の要因です。二つ目の要因は、モバイル決済の選択肢の多さです。中国ではAlipayかWechat Pay、韓国ではkakaopayかSamsung payの2種類の選択肢しか存在しないのに対し、日本ではLINE Pay、ドコモ払い、merpay、amazon pay、楽天ペイなど、選択肢の多さが消費者に対してマイナスに影響しています。それだけでなく、決済システムの多さも挙げられます。楽天EdyやSuica、WAON、nanacoなど、プリペイド型の電子マネーに加え、iD、QUICPayなど後払い型の電子マネーも存在します。これらが、中国や韓国で見られるような現金からモバイル決済への切り替えを阻害している要因です。更に、人口の3分の1を60歳以上が占めている人口動態も要因の一つに挙げられます。60代におけるスマートフォンの所有率は2015年の33%から2017年には56%まで増加したものの、主な利用用途はEメールなどの通信手段に留まります。ただし、若い世代においてはモバイル決済のような新しいテクノロジーへの受け入れ態勢が柔軟である結果も示されています。

日本における市場成長ドライバーについて

テクノロジーの進化により、私たちの生活はもちろん、ショッピングの方法も変化してきました。グローバル全体でのオンライン小売売上額は2017年、全小売売上額の10%を占める14億米ドルを突破しました。日本のオンライン支出額は同年、一人当たり622米ドルであり、世界で15番目に位置します。2022年にはこれが983米ドルまで増えると考えられ、順位も14番目に上がると予想されています。オンラインショッピング業界で注目されていることは、消費者の満足度を高める「パーソナル化」と、配達数をこなすための配送業者による「ラストワンマイル問題」です。まず、なぜパーソナル化が注目されているのでしょうか。それはパーソナル化=個人に合わせたサービスがブランドに対する消費者のロイヤリティを強めるからです。また、個人の興味や過去の行動履歴をもとに商品を探しやすくすることで、売上自体が伸びることも報告されています。次に配送面に関して、日本も他国の例に漏れず、配達件数が増加している反面、配送業者は減少しています。その結果、2006年から2016年の間で、配送業者一社あたりの配送件数が40%も増加しました。このラストワンマイル(配送拠点から顧客まで商品を届ける最終区間)における問題に対し、ヤマト運輸はDeNAと共同で自動運転車で指定された場所まで荷物を届けるサービスの実験を開始しました。また、楽天はTEPCOおよびZENRINと組み、ドローンを利用した配達手段を開発しています。一方、実店舗では、労働人口の減少に伴う人件費の値上がりに直面しています。コンビニ業界においては、労働人口の減少はより深刻な問題です。そのため、より多くの外国人労働者を雇用したり、機械によるレジの無人化などの措置を講じ始めています。

 

日本の消費者に新しいテクノロジーが受け入れられるためには?

家電業界全体の流れとして、メーカーは多大なビジネス機会を創出するコネクテッド家電(注1)に膨大な投資をしてきました。コネクテッド家電を取り巻く環境を国別に見てみると、日本では経済産業省がスマートライフ政策を掲げ、家電業界や住宅業界と協力して、家庭で収集できるデータを役立てるためのイニシアチブをとっています。しかしコネクテッド家電は各メーカーが独自に技術を開発し、別々に販売しているため、各機器を連携させるか否かは消費者の判断に委ねられています。中国では、政府がリーダーシップをとって金銭面および技術面でメーカーを支援しています。また、メーカーはAlibabaやTencentといった巨大企業と協力してコネクテッド家電の開発に力を入れるだけでなく、徐々に他メーカーのスマート家電(注2)との相互運用を開始しています。一方で、日本のメーカーは国内でコネクテッド家電を開発していますが、消費者による受け入れ態勢は非常に控えめであると言えます。

 

このように、デジタル化の動きが加速するなかで、日本の消費者と向き合うためには、

  • 消費者の信頼を勝ち取るために個人情報に対する安全性を確保すること
  • 付加価値を提供するために他社と協力すること
  • 消費者の要望・需要に合わせた商品・サービスを提供すること

の3つが成功への鍵であると考えます。

(注1、2) Euromonitor Internationalによる定義

コネクテッド家電: 利用者や他の機器とネットワークを通じて連携できる家電

スマート家電: 人の介在をほぼ必要とせず、他産業の機器ともセンサーや分析、オンラインサービスなどの連携機能を持つ家電

 

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