スーパーアプリ:世界は中国に続くのか

コミュニケーション、検索、ショッピングや支払いなど、様々なモバイルアプリを一つのプラットフォームで提供している、いわゆるスーパーアプリは、現在のビジネスにどのようなインパクトを与えているのでしょうか。モバイルアプリ利用においてプライベートとビジネスの境界線が消失しつつある今日、シンプルなインターフェイスや瞬間的に欲しい情報を得るといったモバイルのコンセプトが、徐々にデジタル世界においては欠かせなくなってきています。そのような技術革新を味方にすることが今後、ビジネスにおいて非常に大切な要素といえます。

中国におけるスーパーアプリの成功

未だに製造拠点として知られる中国ですが、テクノロジー面での進歩は目覚ましく、今や世界でもリーダー的な存在になりつつあります。その背景の一つに、インターネットが中国政府によって厳しく検閲されている、という事実があります。政府がトップダウンで物事を決定し、国内企業が展開しやすい環境を作り上げました。そのような環境下では海外企業の活動は容易でなく、実際にインターネット大手のMicrosoftやGoogleなどは多額の罰金を科されました。こうしてTencent, Baidu, Alibabaといった国内の競合企業が介入しやすい余地が生まれ急成長を遂げた結果、マーケットシェアの大半を占めるようになりました。なかでもTencentは、Whatsappという有名なチャットアプリからアイディアを得たスーパーアプリ WeChatで、モバイル業界に大きな変革をもたらしています。例えば、中国最大の電子部品販売会社Cogobuyの場合、顧客はWeChat上で製品の値段、スペックや配送に関する情報を確認することが可能です。同社では、WeChat経由の取引高が会社全体の7割を占めています。また、IBMの中国支社は採用と社内コミュニケーションのためにWeChatを利用しています。このように、中国ではPCではなくモバイルアプリの重要性が高まっています。中国は、2030年には実に32兆米ドルのGDPを生み出す世界最大の経済国へと成長すると予測されていますが、WeChatは、その世界最大の経済国への玄関口となっているのです。

WeChatのようなスーパーアプリが成功した要因は他にもあります。一つは、消費者の個人情報に対する考え方です。中国では検閲が厳しく、そもそも個人情報という概念があまりありません。日本を含む他の国々では、個人情報の流出問題などもあり、企業への個人情報の共有に慎重になる消費者が多いのに対しBaiduの創業者であるRobin Li氏は、「中国人消費者は、利便性との引き換えのためならば個人情報の提供に抵抗がない」と述べています。そして、もう一つの要因は他の選択肢がなかったことです。先進国の消費者にとってモバイル決済は、クレジットカードなど多様なデジタル決済手段の一つに過ぎませんが、そもそも中国には他に多くのデジタル決済手段がなかったため、WeChat Payのようなサービスが一気に広がったと言えます。

ビジネスにおけるモバイルの重要性

ビジネスにおける「モバイル」の重要性は今後ますます高まっていきます。まず、消費者のオンライン滞在時間は、以前よりも長くなっています。また、弊社の調査によると、2020年に世界の労働人口の68%はモバイル世代と呼ばれる44歳以下になると予測されています。次に、消費者は、プライベートで使っていたアプリやサービスを職場でも利用し始めています。GmailやDropbox、Skypeなどがビジネスツールとしても当たり前に使われつつある今、デジタルの世界においては、ビジネスとプライベートの境界線は曖昧になってきています。そこで重要な鍵を握るのが、「直感的なユーザーエクスペリエンス」です。必要な情報がどこにあるのか簡単に分かるホームページや、直感的に使えるようなソフトウェアが必要とされています。顧客が求めるものは、プラットフォームによって大きく異なります。PCの場合はスクリーンも大きいため、多少乱雑で情報過多であっても問題ありませんが、スマートフォンの場合はそうではありません。スマートフォンを使っている消費者は、探している情報だけに興味を示すため、より簡単で直感的なインターフェイスが必要です。スマートフォン向けホームページを一から開発する企業も増えていますが、まだまだ多くの企業はPC向けホームページをそのままスマートフォンでも使っているのが現状です。そしてさらに、数クリック・数タッチで求めている情報までたどり着けるのが当たり前になっている現在、ビジネスの場でも素早く、簡単に答えまで導くような仕組み作りが重要になってきています。今日のデジタル社会では、顧客は即時回答を求め、それに対応できないとビジネス機会を失うリスクを負います。例えばチャットボットを導入した企業は30%近く引き合いが増え、売上も10%伸びた、というデータがあります。企業に寄せられる質問のうち、80%はチャットボットでも回答できる内容だとも言われています。

このように、消費者は日々の生活で慣れ親しんだユーザーエクスペリエンスやモバイルサービスをビジネスの場にも求めています。モバイルサービスを押し進めていくうえでのポイントは、

  • PCと同等のユーザーエクスペリエンスをモバイル環境でも実現させる
  • プライベートとビジネスの境界線が曖昧になりつつある点を理解する
  • 消費者が、求めている情報にすぐにアクセスできるようにする

の3点であると言えます。これらの状況を踏まえ、モバイルに見られるコンセプトや技術革新をビジネス環境に取り入れることが、今後モバイル戦略を構築する上で非常に重要になってきます。

 

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