サブサハラ・アフリカ地域の「ニューノーマル」とは

※本記事は英語でもご覧頂けます:Navigating the New Normal in Sub-Saharan Africa

新型コロナウイルス(COVID-19)は、サブサハラ・アフリカ地域の消費財市場の形成に今なお影響を及ぼしており、消費者は価格に見合う価値のある製品を求め、オムニチャネルでの販売方法を受け入れるようになっている。パンデミックの影響を受け、同地域の国々における2020年のGDPは平均で2.8%減少したが、2021年はワクチン接種が進むことで景気が回復し、実質GDPは3%増加すると見込まれている。現在、同地域では、価格競争力がある主食製品や家庭用清掃用品、予防的ヘルスヘアなどに市場機会があると見られているが、企業は、これらの中でも長期的に定着するのはどのトレンドかを評価する必要がある。

2020年、同地域における可処分所得は総じて減少し、中でも南アフリカの減少幅は最も大きく7%減であったが、消費者の可処分所得は2021年末までには回復軌道に入るとみられている。世帯収入に圧力がかかる中、消費者はコストパフォーマンスの良い製品を求め、必需品への支出を優先するようになるだろう。

可処分所得の推移(前年比成長率、2018-2022年)

ナイジェリアにおける米や、南アフリカやケニアにおけるトウモロコシの粉などの主食製品や調理油は、スナック菓子などの嗜好品とは異なり、欠かせない食品として、今後も高い需要が続くとみられる。実際、ナイジェリアでは2020年、米の売上が13%上昇している。また、ウイルスの感染拡大への懸念が残ることから、漂白剤や固形洗剤といった様々な用途があるベーシックな清掃用品は、コストパフォーマンスや自宅の衛生管理を意識する消費者のニーズを満たしている。現に、ケニアでは、2020年の固形洗剤の販売量は6%増加している。さらに、ビタミン剤やダイエタリーサプリメント製品、伝統療法における治療薬などが、他のコンシューマーヘルス製品よりも好まれるようになりつつあり、背景には、ニューノーマルの一環として予防の観点からヘルスケア製品を求める消費者が増えていることがある。例を挙げると、ケニアとナイジェリアでは、ビタミンCが他のビタミン剤よりも好調であった。

メーカーや小売業者は、必需品に新たな焦点を当てることで、価格に見合う価値を求める消費者のニーズを利益に繋げることができるようになる。特に、懐事情が厳しい消費者に対してプロモーション価格やお買い得セールを提供することは、成果を上げるのための手段であるといえる。例えば、南アフリカの大手スーパーマーケットのPick n Pay(ピックンペイ)では、Nestlé(ネスレ)のインスタントヌードル5個セットという既にお買い得なセットを、2点購入ごとに1点無料にして販売している。また、提供する製品のサイズの種類を増やすことで、より幅広い消費者セグメントにアプローチが可能となる。例えば、Quaker Oats(クエーカーオーツ)はナイジェリアにおいて、自社のインスタントオートミール製品を、小さなサイズのフレキシブル包装で提供を開始したことで成功を収めている。

消費者行動の変化がオムニチャネルの重要性を強調

2020年、ナイジェリアと南アフリカでは小売販売額が18%、ケニアでは7%縮小した。その一方で、パンデミックは既存のEコマースの成長を加速させ、多くの企業が同領域に参入するようになった。例えば、南アフリカのWoolworths (ウールワース)は、Woolies Dashという即日配送サービスのモバイルアプリの提供を始めた。Woolies Dashによって消費者に食料雑貨が提供され、同社のオンラインストア事業を補完している。

Eコマースは強い成長軌道にあり、しばらくの間2桁成長を続けると見込まれている。この成長は特に南アフリカで顕著で、2020年には40%以上の成長率を達成した。Eコマースはモバイルコマースが占める割合が大きく、この地域は特にインターネットを利用する主要なデバイスが携帯電話であることから、モバイルコマースがEコマースに占める割合が大きく、いかなるマーケティングミックスを用いるにしても、モバイルチャネルは欠かせないといえる。

一方で、消費者はその安さや利便性、近さから、一般市場などの従来のチャネルの利用も継続するだろう。これは特に、低所得の消費者の間で見られる傾向で、一度に購入する製品の量が、基本的に少ないことが理由のひとつにある。消費者の買い物の仕方や買い物をする場所については、今後さらに進化するとみられており、その中でも、オムニチャネルを活用した流通戦略がますます重要になっていくだろう。

Eコマースの市場規模および前年比成長率(%)2015-2024年

Source: Euromonitor International Retailing data, 2020

2020年はパンデミックによる品不足に悩まされたことから、現地生産品とその消費に注目が集まっている。消費者も輸入品よりも現地で生産された製品を選ぶようになっており、このシフトを促進しているといえる。さらに、輸入品に対するコスト増も相まって、各国政府による経済刺激策が現地での生産と消費を推し進めていくとみられている。例えば、南アフリカの政府公認のProudly South African(「南アフリカ製品に誇りを」)キャンペーンでは、現地生産された洗剤などの製品を専用のウェブサイトで公開する取り組みを始めた。これにより、特に小規模メーカーが恩恵を受けている。

メーカーや小売業者が変化する消費者の傾向やニーズを把握し商機に結びつけるためには、イノベーションが重要となる。世帯収入の水準が回復するまでは、消費者のコストパフォーマンスの良い製品を求める傾向は続くとみられる。コストの削減や価格に慎重な消費者を支えるために、例えばアルコール度数を減らし、税率を抑えた低価格な酒類製品を投入するといった、製品処方などの見直しもあるだろう。

サブサハラ・アフリカ地域における小売市場の売上は、2021年に7%の増加が見込まれている。しかし、COVID-19による影響や現地の状況があるため、国ごとにその回復の具合は異なるだろう。ケニヤとナイジェリアの小売業界は最も早い回復すると予想されており、2022年までに2019年の市場規模の水準をそれぞれ上回る見込みだ。一方、南アフリカにおける同業界の市場規模を見ると、以前の水準に回復するのは2025年までかかるだろうとみられている。このような状況の中、消費者はコストパフォーマンスの良い製品を求め、今後もEコマースが加速するオムニチャネルでの買い物を利用していく可能性が高い。バリューチェーンに加わる企業は、イノベーションを通して消費者の変わりゆくニーズに対応しつつ、現地調達にさらに注力し、自社のサプライチェーンを守っていくことで、これらのビジネスチャンスを獲得することができるだろう。

パンデミック後の飲料業界などの変化に適応するための戦略に関する洞察については、弊社の有料レポートThe New Normal for Consumer Goods in Sub-Saharan Africaをご覧ください。また、世界の国・消費者に関する統計データや定性分析をお探しの方は、こちらまでお問い合わせください。

(翻訳:横山雅子)