インドネシア:デジタルウォレットの高い使用率、他の決済方式への影響とは?

※本記事は英語でもご覧頂けます:How Is the High Use of Digital Wallets Impacting Other Payment Types in Indonesia?

ユーロモニターインターナショナルが2020年に実施した最新の「デジタルコンシューマーサーベイ調査」によると、インドネシアはデジタルウォレットの使用率が30%と、調査対象国の中で中国(同37%)に次いで2番目に高い国でした。この高い使用率は、インドネシアの消費者の決済方法の選択と店舗におけるデジタルウォレットの導入に大きな影響を及ぼしていることを意味します。

実店舗およびオンライン上での決済におけるデジタルウォレットの使用率

Source: Euromonitor International, Digital Consumer Survey 2020

加速する現金からキャッシュレスへの移行

インドネシアでは、銀行口座を持たない人が2019年に42%と依然として多いことから、今でも現金が最も一般的な決済方法ですが、同国政府はキャッシュレス社会の実現のための取り組みを強化しています。その対策の一つが、銀行口座やキャッシュカードがなくても人々が現金でデジタルウォレットにチャージ出来るシステムです。また、インドネシア決済システム2025ビジョン(Indonesia Payment Systems Blueprint 2025)の一環として、2020年初頭に統一の標準QRコード(QRIS)を導入しました。これにより、商店と消費者の双方にとってモバイル決済への適応が簡単になったことで、店頭におけるデジタルウォレットの使用が急速に拡大しています。

価格に敏感なインドネシアの消費者にデジタルウォレットを普及させるための戦略として、大々的なディスカウントやキャッシュバックキャンペーンを行い使用者基盤の拡大に努めていますが、サービスプロバイダーも今後は利益を上げていかなければならないことから、これらの「特典戦略」は徐々に少なくなることが予想されます。しかし、当面は規模を縮小しながらもキャンペーンは続くものと見られ、普通のディスカウントよりもポイント付与やキャッシュバックといった特典の方が多くなるでしょう。

小規模の地元店舗が好むデジタルウォレット決済

商店がどの決済方式を導入するかは、自店がターゲットとする消費者層、メインの販売チャネル(オンラインか実店舗か)、取引額、競合店舗が導入している決済方式、そして導入コスト(例:取引額の何%、最低取引額等)によって異なります。

インドネシアにおけるデジタルウォレット決済の導入は、中小零細企業(MSMEs )に分類されるビジネスでより顕著に見られます。MSMEsは通常、特定の消費者グループに特化してビジネスを展開することが多く、決済方法もターゲット消費者グループの間で最も使用されているものに限定することが多い一方、一般大衆向けかつより規模が大きな小売店では、様々な決済方法の使用が可能です。

デジタルウォレットが低コストであることも、低・中所得者層をターゲットとするビジネスが好む理由のひとつです。一方、ハイエンドの顧客を対象とする店舗では、未だにプレミアムの位置づけであるカードの使用が好まれています。デジタルウォレットは国内の外国人消費者にとっては所有や利用がより難しいことから、地元の消費者を相手に商売をしている店舗との相性がより良いといえます。

デジタルウォレットが他の決済方式にもたらしている影響

デジタルウォレットの多くは、利便性や低コストといった利点に惹かれる消費者グループをターゲットとし、現金決済からデジタルウォレットへの切り替えを働きかけています。デジタルウォレットがカード決済にもたらしている影響については、取引の性質によっても異なります。

例えば、インドネシアではクレジットカードは取引の頻度は多くはないものの、分割払いのオプションなどを使いながら取引額が大きな買物で使用されることから、デジタルウォレットがクレジットカードにもたらす影響は大きくないといえます。デジタルウォレットの中には、買物後に支払が出来るクレジットサービスを開始したものもありますが、それでもクレジットカードへの影響は大してありません。一方で、デビットカードと比較すると、デジタルウォレットが提供する利点の方が大きいため、デビットカードへの影響は目に見て取ることができます。しかし、インドネシアの消費者は少額取引においてデビットカードを使用することがほとんどないことから、取るに足らないことであるともいえるでしょう。

デジタルウォレットが他の非現金決済方式にもたらしている影響は、今のところ限定的です。しかし、COVID-19の発生を受け台頭したEコマースと非接触型決済により、デジタルウォレットの使用は更に拡大し、決済企業間の競争も大手カード会社や金融機関を巻き込んで加熱することが予想されます。デジタルウォレットは、現行の決済ビジネスのエコシステムにおける新しい収入源となり、未だに現金を使用している消費者層という未開発市場への扉を開きました。また、技術的イノベーションを続けるデジタルウォレット企業は、従来型の決済企業にとっては大きな脅威となります。従来型の企業は自社のブランドイメージを守りつつも、時代の流れに取り残されないための投資をする必要が出てくるでしょう。

より詳細な情報はユーロモニターのレポート「Digital Consumer Survey 2020: Key Insights Report」および「Financial Card and Payments in Indonesia report」をご覧下さい。