より良い復興を目指して:気候非常事態の中を生きる

本記事はレポート『2021 世界の消費者トレンドTOP10』で紹介している10のトレンドのうち1つを取り上げ考察したものです。レポート全文(日本語版)のダウンロードはこちらから。

「より良い復興を目指して」トレンドとは、パンデミック以前よりも人や社会に対して思いやりがあり、公平かつ環境にも優しいと感じられるような、新しい「ニューノーマル」な日常を追求することを指します。明るい未来とは、本当に大切なことや愛する人々、そして我々が住むこの星を尊重して生きる世の中のことです。

サステナビリティは消費者にとってますます重要な課題になりつつあります。WHO(世界保健機関)が2020年3月に新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを宣言する数週間前の時点においては、55%の消費者が「自らの日常の行動を通して世の中にプラスの変化をもたらすことができると感じている」と回答しており、2015年時に比べ10%ポイント増加しています。

2020年、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の死亡事故をきっかけにBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)運動が活発化し、政府に対して警察の暴力を止めさせるよう積極的に動くことを求めるなど、倫理的な課題は消費者にとってさらに重要なものになりました。2021年、社会問題が引き続き重視される中、環境への意識もパンデミック以前よりも高まりを見せるものと考えられます。

フランスではエコサイド(重大な環境破壊)が犯罪になりつつあります。企業のCEO(最高経営責任者)および政府大臣は、環境破壊行為に対する責任があるとみなされた場合、法律によって最高450万ユーロの罰金または10年間の禁固刑が科されることになります。

パンデミック禍においても、気候変動は依然として世界的に大きな懸念であり、消費者の実に3人に1人が気候変動の影響を危惧しています。33か国が気候非常事態を宣言するなど、世界各国の政府は対応に追われています。 パンデミックがネット・ゼロ(二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が実質ゼロであること)な経済への移行を促進させる中、気候行動は「より良い復興を目指して」の考え方と結びついています。

2015年はパリ協定の締結や、UN(国際連合)の持続可能な開発目標(SDGs)が示されるなど、気候変動への意識が高まった重要な年でした。そして2020年は、気候変動を意識する消費者が、購入する製品が環境にもたらす影響について今まで以上に気を遣うようになるなど、気候行動にとっての重要な転換期となりました。

「気候変動の影響が心配だ」と回答した消費者の割合

2020年、企業やブランドは大胆な二酸化炭素排出量削減の目標を宣言し、中には自社の食品製品にカーボンラベルを導入し、消費者に対して製品の購入が環境にもたらす影響に関する情報を伝える会社も現れました。同年2月、Quorn(クォーン)が主要ブランドの中で最初にカーボンラベルを導入すると、その4か月後にはUnilever(ユニリーバ)が70,000の自社製品にカーボンラベルの使用を開始しました。また、Flora(フローラ)やProactiv(プロアクティブ)といったブランドを擁するUpfield(アップフィールド)も2021年中にはカーボンラベルへの切り替えを計画しています。

COVID-19の感染拡大は消費者習慣を変えたほか、今まで見えなかった、利便性と収益性を優先することによる社会経済的コストおよび環境コストを浮き彫りにし、製品需要や生産、そして企業利益にプレッシャーをもたらしました。パンデミックにはその発生により、企業やブランドが無私無欲に社会的な目的を追求し、人々に良い影響を与えているという、ポジティブな側面もあるといえるでしょう。

現在の健康危機が史上最悪の景気後退に変わりつつある中、人々の視線は、企業がいかに利益を後回しにしながら社会的な目的のために取り組んでいるかに注がれています。芳しくない経済状況の中にありながらも、あらゆる業界において2020年から2025年の間にサステナビリティへの取り組みに対する投資を強化する企業の動きがあるなど、明るい兆しが見られます。

今後どのサステナビリティ分野に投資をしていくか(2020年~2025年)

企業によるこれらの投資は、ブランドイメージや評判のためだけでなく、「今までどおり」というコンセプトを捨て去り、競争や対抗をも忘れて世界的な問題と立ち向かいながら経済的に意味のある行動を取るという強い信条に基づいています。

現在の経済システムは、様々な問題を解決できずにいます。そのシステム上に成り立つ従来のビジネスモデルが限界を打ち破ることで、新しい可能性を切り開くことができるかどうか、世界は今、岐路に立っています。企業や政府が今日下す決定が、明日の世界を形作ります。COVID-19危機を経て明らかになったのは、企業にとってサステナビリティはマーケティングツールではなく、未来に備えるために必要不可欠なものである、ということです。

「より良い復興を目指して」トレンドを含む世界的な主要トレンドについては、『2021 世界の消費者トレンドTOP10』をご覧ください。日本語版ダウンロードはこちらから。