「自宅が中心」の未来に挑む、旅行者・移動者向けフードサービス

※本記事は英語でもご覧いただけます:Travel and On-the-Go Foodservice Must Prepare for a Home-Orientated Future

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、フードサービス業界に恒久的な影響をもたらしました。多くの国で、政府による飲食店での食事の規制や、入店できる人数の制限といった短期的な感染拡大防止対策が講じられ、同業界の売上は大きな打撃を受けました。在宅勤務への移行がさらに進むといった長期的な変化は、消費者が今後どのように移動するかということだけでなく、フードサービスの売上を左右する人々の出足にも影響をもたらすことになります。

トラベル(旅行者、移動者向け)フードサービス市場はこれまで、予測可能な消費者の行動パターンを基盤として拡大してきました。在宅勤務が常態化し、企業が移動費を削減するようになると、消費者の行動パターンは予測がしづらくなり、自宅で物事を済ますことが多くなります。これによって人々は、外出時のフードサービス体験により多くを期待し、より贅沢にお金を使うようになります。

パンデミック発生前、トラベルフードサービスを支えた通勤と出張

ユーロモニターインターナショナルの調査によると、パンデミック発生前の2019年、全世界のフードサービス業界の売上の4%が道路沿いや駅、空港などにある飲食店といった、旅行や移動に関わる場所で発生しており、合計で1,170億米ドルに達していました。McDonald’s(マクドナルド)、Starbucks(スターバックス)、Prét-a-Manger(プレタマンジェ)といった多国籍チェーンは、この旅行・移動セグメントにおいてもお馴染みのメニューを提供し、売上を急速に伸ばしました。毎日同じ店の前を通る通勤客には店のアプリのダウンロードを促し、常連化に導きました。これにより、他の場所に行った際にも同じブランドの店舗を探して利用する顧客が現れるなど、顧客ロイヤルティが育ちました。

旅行・移動セグメントにおける世界のフードサービス売上:2018-2023年

Source: Euromonitor International Passport Industry Data, Consumer Foodservice; Note: forecast years are shown in real term, constant 2019 prices

パンデミックは従来の行動パターンを一変させ、ニューノーマルが既に現れています。先日米国で開催されたカンファレンスにおいて、Dunkin’ Brands(ダンキン・ブランド)が「来客数が多い時間帯が、朝の時間から午後の早い時間に移行した」と報告しました。ダンキンは在宅勤務をする消費者にとって、毎朝通勤の際に立ち寄る場所ではなく、午後の息抜きに行く場所になりつつあります。これまで朝食として販売されていた商品が昼食や昼食後のデザートとなるなど、商品に対するニーズも変化しています。パンデミックの中、フィリピンのマクドナルドでは、ドライブスルーの受け取り窓口から、自転車やスクーター、徒歩で受け取れる「Ride-Thru(ライドスルー)」というサービスの提供を始めました。朝のマイカー通勤者の客数を予測しやすかったこれまでに比べ、現在は予測しにくい突発的な来店や目的が異なる様々な来客が増えたため、マクドナルドは多様化する消費者ニーズをくみ取るべく、現状への適応を迫られていると言えます。

予測されるコロナ後の消費者行動の変化

Source: Euromonitor International Voice of the Industry COVID-19 Survey, October 2020

ビジネス出張もまた、駅や空港内での売上など、トラベルフードサービスにおいて大きな部分を占めていました。駅構内や空港といった場所で営業する店舗は、顧客ロイヤルティよりも、定期的な通勤・通学者か否かにかかわらず、人の行き来が多いことに恩恵を受けていました。しかし現在、ビジネス出張は、未だ先の見えない状況に直面しています。パンデミック発生以前、世界の全旅行者数の23%はビジネス出張によるものでしたが、ユーロモニターの将来予測では、世界の全旅行者数がパンデミック発生前の水準に回復するには2022年までかかると予想されています。このことから、レジャー目的や家族での旅行者は、空港の中でも異文化への旅行体験を感じることができるフードサービスを好むようになります。どの店舗でも同じメニューを提供する大手チェーンは、空港内で行楽客をターゲットに「旅行体験」を前面に押し出した独自メニューを提供する地元店に苦戦を強いられるかもしれません。

ペントアップ需要が今後の支出を促す

今後、フードサービスの利便性がもたらす商機は2つの異なる方向性に分かれるでしょう。1つは、自宅にいる消費者を対象に、デリバリーやゴーストキッチン、食料雑貨の買物代行などの新サービスを提供する、自宅中心の生活における利便性を追求する全く新しい商機です。もう1つは、旅行者または外出先の消費者向けのフードサービスまわりで生まれる商機です。消費者は今後、旅行や外出の頻度を減らす代わりに、その機会を目一杯楽しみたいと考えるようになり、そこに生まれる新たな利便性へのニーズが商機となります。

パンデミック収束後は通勤の頻度が減り、あっても週に1、2回になるかもしれません。企業が出張費を削減し、バーチャル技術を活用するようになるため、ビジネス出張の回数も減るでしょう。消費者はあまり頻繁に移動することがなくなり、行動パターンはさらに予測しづらくなります。人々は、外出の機会を最大限に活用したいと考え、外食も並んだり、高いお金を払う価値があるお店を選ぶようになります。たまに通勤する人々は、オフィスの近くで手っ取り早く食事を済ませられる店よりも、本当に食べたいお店を探して歩き回るようになるなど、フードサービスにとっては新しい商機が生まれる可能性があります。

今後、人々にとって外出することは、外食の体験を最大限に楽しむための機会となります。店舗は利便性だけで通りゆく人々の心を掴むことが難しい場合、ブランドやストーリー性、メニューを刷新することで差別化し、外出時の消費者が求めるフードサービス体験を提供することが必要になります。正しい場所とメニューの組み合わせができるトラベルフードサービス企業は業績が上がり、新たな形のブランドロイヤルティの恩恵を受けていくことになるでしょう。

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