「コンシャスな消費」が方向付ける美のキーテーマ

※本記事は英語でもご覧いただけます:Conscious Consumerism Shapes Key Themes in Beauty

消費者が自分にとっての美を自ら定義することは今に始まったことではないが、このトレンドは新型コロナウイルス(COVID-19)によって、今まで以上に高い水準で肌の健康、そしてサステナビリティを追求するという、新しい段階のコンシャスな消費に向かって加速している。「コンシャスビューティー」とは、内外的な要因のバランスを取りながら、究極的には消費者の個々のニーズと地球環境を包括的に考えることである。消費者は自分の肌タイプに合ったケアを探すだけでなく、自らの製品購入がもたらす倫理的および環境的な影響と、自分にもたらす利益を同等に考えるようになっている。

コンシャスビューティーの考えは、近年ビューティー・パーソナルケア業界に広く浸透している。背景には多すぎる商品選択肢、認証基準の欠如、わかりにくい表記、怪しい環境戦略といった問題がある。現に、エコ表示に対する消費者の信頼も、2017年以降、低下の傾向にある。

エコ表示に対する消費者の信頼 2015年/2017年/2020年

Source: Euromonitor International’s Lifestyles Survey, 2020

肌の悩みに合わせ、成分重視のアプローチを取る消費者たち

コンシャスビューティーの内在的な要素とは、消費者一人ひとりの肌タイプや敏感度、ニーズを理解し、パーソナライズされたケアをすることである。スキンケアブランドが市場に溢れる中、消費者は 有効成分について自ら学び、ナイアシンアミドやヒアルロン酸といった成分が肌に持つ効果についても知るようになった。健康的な肌の追求が重要になる中、使用される成分に関する安全性や透明性、原産地に関する情報もますます求められている。パンデミックの発生により抗ウイルス、免疫向上、自然治癒といった効果を期待できるとされる成分により重きが置かれるようになり、肌を守り強くする製品が強く求められている。

新型コロナウイルス(COVID-19)の発生は「原点回帰」のアプローチを促進させ、シンプルさ、透明性、無駄のないパッケージを売りとするThe Ordinary(ジ・オーディナリー) や The Inkey List (ジ・インキーリスト)といったブランドが大きな成功を遂げている。また、2020年は、Boots(ブーツ)のBoots Ingredients(ブーツ・イングリーディエンツ)やHolland & Barrett (ホーランド&バレット)のVitaskin(ビタスキン)など、より多くのブランドおよびリテーラーが、成分を重視した美容の流れに乗るようになった。不況の中、これらの手頃な価格帯のブランドは、安価でありながらプレミアムブランドと同等の効果・効能を期待できるなど、プレミアムブランドにとっては脅威となっている。

スキンケア製品:証明された効能と低価格、どちらを選ぶか

Source: Euromonitor International’s Beauty Survey, 2020

消費者生活に組み込まれる「エシカル」と「環境にやさしい消費」

外因的な要素を見ると、COVID-19はサステナビリティを考慮した消費を加速させている。ユーロモニターが実施した「ライフスタイルサーベイ調査」の結果によると、「気候変動は将来、今以上に自分たちの生活に影響をもたらすだろう」と回答した世界の消費者の割合は、2019年の42%から2020年には47%に増加している。気候変動の厳しい現実に直面する中、ビューティー業界の主要企業が2020年、エコへの取り組みに対して多くの企業資源を充てるようになるなど、グリーン戦略はもはやニッチな企業だけの領域ではない。パーソナルケア用品大手のUnilever(ユニリーバ)は2020年10月、英国のAsda(アズダ)店舗において、同社としては過去最大規模の商品補充型販売のトライアルを開始した。またProcter & Gamble (プロクター&ギャンブル)も2021年に自社のシャンプー製品の詰替販売を開始する計画中であるなど、循環型経済の採用が進んでいる。

未来のパッケージング開発も、ビューティー企業にとって優先的な課題である。例えば資生堂が、初めて生分解性素材を使用したリップパレットを発売した一方、L’Oréal (ロレアル)は、回収された産業排出の二酸化炭素を使用した製品容器を開発している。サプライチェーンの透明化も重要性が高まりつつあり、Estée Lauder (エスティーローダー)がブロックチェーンの技術を試験導入し、自社マダガスカル産バニラの供給のトレーサビリティ(追跡可能性)の向上に努めている他、様々なブランドが「ファーム・トゥー・フェイス」(原料を作る農場から利用者の顔まで)のコンセプトの下、より行き届いた製品の製造工程の管理を目指している。 パンデミックが発生し、世界中で消費者の安全と衛生が喫緊の課題となった。ユーロモニターが実施した「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティ」業界サーベイ調査によると、ビューティー・パーソナルケア企業の48%が、COVID-19の発生を受け、自社のサステナブル製品の開発を停止、または延期したと回答しているが、サステナビリティに対する消費者の努力はCOVID-19危機収束後に改めて高まることが予想されることもあり、企業は様々な環境問題に対する取り組みへの投資の再開を計画している。

今後5年間に投資を予定しているサステイナビリティの取り組みは?

Source: Euromonitor International’s Voice of the Industry Sustainability Survey, conducted in June 2020

目的主導の活動を包括するサステナビリティ

COVID-19によって、企業は自社の企業活動が人々や地球にもたらすネガティブな影響を相殺するだけでなく、それ以上のことをしなければならないという新しい意識が生まれており、消費者も自らと同じ倫理観を持つブランドを選ぶようになりつつある。これによって「サステナビリティ」の定義は、倫理的な信用や環境への配慮だけでなく、利益よりも目的の追求を目指し、社会的、環境的、そして経済的な価値を生み出す、よりホリスティックなアプローチを意味するものとなる。

前述の「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティ」業界サーベイ調査によると、ビューティー・パーソナルケア企業回答者の60%が、「自分の会社は今後、社会的課題および健康課題に対し、環境課題とバランスを取りつつ取り組んでいくだろう」と答えている。いくつかのブランドが、反倫理的な行動の説明責任を問われるなど、ビューティー企業やブランドは、自らの倫理的、道徳的な責任をますます意識するようになっている。Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)の抗議運動が活発化すると、色白の肌を理想的だとする「美白」製品を販売するブランドは大きな批判を受け、ユニリーバやロレアルは「ホワイトニング(白くする)」「ライトニング(明るくする)」「フェアネス(色白)」といった表現を製品パッケージから削除することを決めた。このように、ビューティー・パーソナルケア業界内では、 多様性や異なる価値観に対して寛容であることが一層求めらるようになった。人種やジェンダーにとらわれないビューティー製品の需要が高まる中、Sephora(セフォラ)は米国国内の同社店舗内の棚スペースの15%を、黒人経営のブランドに割り当てる「15パーセント・プレッジ」の取り組みへの賛同を表明した。

政治的、社会的問題に積極的に関わるためにあなたが取る行動は?

「コンシャスな消費」は定着し、ビューティー業界の製品開発からサステナビリティ、そして多様性に至るまで、あらゆる領域に影響をもたらし続けるだろう。ビューティー企業は、効果的かつパーソナライズされたスキンケアに対する消費者需要に応えていくことが引き続きの優先課題である一方、環境や倫理に対して更なる配慮が求められる今後の世界において、より高いサステナビリティの責任を果たし、社会目的をこれからの企業戦略の中心に置いて進むことが期待されている。

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