Coronavirus (COVID-19) From permanent shifts to temporary change, we identify the themes transforming consumer markets as behaviour, values and priorities shift in the light of the Coronavirus pandemic.

中東地域の消費者トレンドを形成するEコマース、トレードダウン、巣ごもり生活

6/16/2021
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※本記事は英語でもご覧頂けます:How E-Commerce, Trading Down and Staying Close to Home are Shaping Consumer Trends in the Middle East

2021年、新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらした課題は、引き続き中東地域に重くのしかかっている。地域および世界情勢の見通しが不透明であることに加え、失業率の上昇やソーシャルディスタンス措置といったパンデミックの影響が残っていることから、2021年以降の小売における支出は減少すると予想されている。パンデミックの発生から1年が経過し、消費者はニューノーマルに適応しつつあるが、消費習慣は変化している。2021年以降の中東地域で注目すべき3つの消費者動向は、「Eコマースへの移行」、「トレードダウン」、「自宅(の近く)に留まる」である。

全体的に遅く、国によって異なる今後の景気回復

2021年、中東地域の多くの国では、小売における支出が増加するものの、ほとんどの国では2019年の水準に回復するのは2022年半ばか2023年になるだろう。 例えば、UAE(アラブ首長国連邦)の小売総売上高は、2021年に12%増加すると予想されているが、小売における支出がパンデミック前の水準に達するのは早くても2022年半ば以降になると見られている。これは、巨大な高級品市場をはじめとした同国の小売業が、観光および旅行者の支出に大きく依存しているためである。一方、レバノンでは、通貨の大幅な切り下げと政治的対立のため、小売市場は2021年から2025年にかけてさらに縮小することが予想される。

小売市場の回復ペースは予防接種に後押しされると思われるが、ワクチンの接種時期に大きな差があるため、地域によってばらつきがあることが予想される。例えばアラブ首長国連邦は世界的に見てもワクチン接種が最も進んでいる国のひとつである一方、オマーンやレバノンなどの国は大幅に遅れている。

中東諸国のGDP実質成長率 2019年~2025年

中産階級層に高まる不安感によりトレードダウンが進む

2021年、中東地域では消費者心理の悪化が続いており、安定した収入を得ている消費者でも、トレードダウン(より安い物を選択すること)やコスパを求めるようになっている。特に、モダントレードと称される近代的な食料雑貨小売店において、消費者はコスパを求めてより安価なブランドやプライベートブランドの製品を選ぶようになった。例えば、2018年末に開店したUAE初および現在のところ唯一のディスカウントストアであるLandmark Group(ランドマーク・グループ)のVivaが挙げられる。Vivaは、商品の大部分(棚のスペースの約80%)がプライベートブランドで、飾り気がない店づくりで展開している。Vivaは2021年、シャルジャ、アル・アイーン、アジュマーンなど、UAE国内で急速に拡大し、1年足らずで店舗数が倍増した。2025年までにはより多くのディスカウントストアが同国の市場に参入し、このチャネルは今後大きく拡大することが予想される。ディスカウントストアの拡大は、低価格製品を求める消費者の利益につながるが、競合しなければならない小規模な食料雑貨小売店にとっては、利益率が下がるなど、大きな問題になるだろう。

トレードダウンは、中東地域のビューティー・パーソナルケア業界においても顕著に見られ、ほぼすべての製品カテゴリーにおいて、マス製品の成長率がプレミアム製品のそれを上回っている。消費者はより安い製品を求めてはいるが、今まで通りの品質や魅力的なパッケージングを求めている。このような傾向が、「大衆のためのプレステージ」とも呼ばれる「マステージ」製品に商機をもたらしている。マステージ製品とは、手頃な価格のラグジュアリー製品のことで、よりプレミアムな品質を低価格で提供する製品のことを指す。

自宅(の近く)に留まる

2021年以降、規制が解除された後も継続することが予想されるもうひとつのトレンドが、「自宅(の近く)に留まる」という消費者習慣である。このような 「出不精」な消費者志向は、消費財業界だけでなく、消費者がどこでどのように買い物をするかにも影響をもたらすだろう。多くの消費者は、長距離の移動や混雑を避け、地元や近隣の食料雑貨品店を選ぶことが予想される。こうした流れに対応すべく、小売企業の中には、小規模な食料雑貨チェーンやコンビニエンスストアを強化しているところもある。 例えばアラブ首長国連邦のADNOC Distributionは、2020年、自社のコンビニエンスストアを大規模に改装した。棚スペースを改善し、バス・シャワー用品やホームケア製品の品揃えをこれまで以上に充実させたことにより、2019年にはわずか1ブランドであったデオドラント商品の棚には、2021年には5、6ブランド分揃っている。

自宅(の近く)に留まる傾向は、中東地域のビューティー・パーソナルケア業界にとっても重要な意味を持つ。これは、消費者が自宅(の近く)に留まることで、フェイシャルマスクやヘアマスクの使用、自分で行うスパトリートメントなど、自宅で日常的にお手入れすることが増えるからである。例えば、サウジアラビアでは、ヘアケア製品が2020年に2桁の伸びを示し、2021年から2025年にかけてさらなる成長が見込まれている。なお、スキンケアの習慣は多くの場合、一度習慣化すると定着する傾向がある。

デジタルトランスフォーメーションが回復を形づける

中東地域では若くデジタルに精通した世代によってEコマースへの移行が急速に進み、中でも特筆すべきは、Eコマースにおける飲食料品の売上がパンデミックの間に3桁成長を遂げたことである。例えば、UAEでは、飲食料品のEコマース売上は2020年に実質259%の成長を遂げた。その反動で2021年はマイナス成長に転じることが予測されるものの、その後は2025年まで2桁成長が続くなど、今後もEコマースが拡大する傾向は継続するものとみられている。サウジアラビアでは、飲食料品のEコマース売上は2020年には実質200%増加し、2021年も2桁成長を続け、この傾向は2025年まで続くと思われる。

この数字から、特にオンラインでの食料雑貨品購入において、これらの新たな習慣が、ソーシャルディスタンス対策が解除されてもなお人々の生活に定着していくことが読み取れる。小売業者は自社のオンラインやモバイルでの発信力を向上させながら、Eコマースへの高まる需要に迅速に応えている。多くの小売業者は消費者とのコミュニケーションの手段としてWhatsAppやFacebook、電話を活用し、地元や最寄りの店舗ではこれらのツールを利用して販売を促進している。

同地域の多くの消費者にとって、スマートフォンは(デスクトップパソコンよりも先に)技術に触れる最初のデバイスであり、これによりモバイルEコマースに最適な環境が作られ、現金離れを加速させている。より先進的なGCC(湾岸協力会議)加盟国ではGoogle PayやApple Payなどのアプリを使った非接触型決済に移行する動きが急速に進んでおり、これが市場の回復を促進させている。パンデミックの影響により、これまで好まれていた代引きを選ぶ傾向が弱まり、むしろ消極的だったモバイルデバイスにクレジットカード情報を登録する人も増えてきている。

中東地域におけるインターネット普及率:2019年~2021年

今後の予測:回復のカギを握るのは消費者データ

過渡期である2021年、中東地域の在庫予測は、消費者反応の見極めがつかないことから、未だかつてないほど難しい課題となっている。ひとつだけ確かなことは、Eコマースは今後も成長を続けるということである。これにより商品の幅が広がり、消費者はよりお買い得な、そして自宅により近いところで過ごせる選択肢を持つことができるだろう。今回のパンデミックでEコマースが成長したことで、中東地域では不足していた消費者データを大量に得られたことも大きい。これにより、今では多くの小売業者が、消費者がどのように商品を見て回り、どんな製品を購入するのかを把握するようになった。今後はさらにパーソナライズ化されたサービスや、おすすめを提供できるようになるなど、消費者データの活用が2021年以降の売上を促進する大きな要因になるだろう。

これらのトレンドが自社の事業や製品分野にどのような影響をもたらすかについて、詳しい調査にご興味のある方はこちらまでお問い合わせください。

その他の日本語記事はこちらよりご覧頂けます。

(翻訳:横山雅子)

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